売上1兆円超えのユニクロ、関税リスクにどう立ち向かう?

ファーストリテ、通期最高益に上方修正 北米は関税などで下期減益 | ロイター

ファーストリテイリングは10日、2025年8月期の連結営業利益見通し(国際会計基準)を5300億円から前年比8.8%増の5450億円へ上方修正した。上期に国内、欧州のユニクロ事業が計画を上振れた。最高益を予想するものの、北米については米関税の影響を織り込んだほか、昨年一時的に計上した戻し入れ益がないことから、下期に約2割の減益を見込む。

ファーストリテイリングが記録的な業績を達成する一方で、トランプ政権の関税政策が再び注目を集めています。
ユニクロを展開する柳井正会長は、こうした保護主義的な政策に疑問を投げかけています。
ユニクロの業績好調の要因と、関税が企業に与える影響、そして柳井会長が示す国際社会とのつながりの重要性について考えてみましょう。

業績好調の背景

ファーストリテイリングは2025年8月期の営業利益予想を5450億円に上方修正しました。前年比8.8%増となり、過去最高益が見込まれています。また、上期(2024年9月〜2025年2月)の売上収益は1兆7901億円で、前年同期比12%の増加となりました。

好調の要因として、主に以下の3点が挙げられます。

  • 国内ユニクロ事業は、適切な在庫管理とインバウンド需要の回復により売上が11.6%増加
  • ヒートテックや新素材「パフテック」のアウターなどの人気商品が好調。
  • 海外ユニクロ事業は14.7%増加し、特に欧州では前年比30%の成長を記録
  • 東南アジアや北米でも着実に売上を伸ばしている
ファーストリテイリング決算説明資料より
セグメント別に見るトレンドの変化

2025年8月期上期のセグメント別実績から、事業の成長バランスにも明確な傾向が見られます。

国内ユニクロ事業:インバウンド需要が回復

  • 売上収益は5415億円(+11.6%)で堅調な伸び
  • 事業利益は27.7%増加し、営業利益率も18.0%に改善
  • 商品在庫の適切な管理が収益改善に貢献

海外ユニクロ事業:成長のけん引役

  • 売上収益は1兆141億円(+14.7%)
  • 欧州を中心に30%以上の成長を記録
  • ただし、利益率はわずかに減少(-0.3pt)しており、為替や物流コストの影響も

ジーユー事業:利益率が課題に

  • 売上は3.9%増と横ばいに近い成長
  • 事業利益は13.3%減と大幅減益
  • 商品政策や価格戦略の見直しが急務といえそう

グローバルブランド事業:再構築の時期

  • 売上は2.3%減でやや停滞
  • 営業利益は9億円と小規模で、ブランドの位置づけ再定義が求められている
ファーストリテイリング決算説明資料より
関税政策と企業への影響

一方で、トランプ政権が打ち出した高関税政策が、北米でのビジネスに影響を与える可能性があります。ユニクロは東南アジア、とくにベトナムでの生産を拡大しており、これらの地域から米国への輸出に関税が課されることで、収益構造に影響が出る懸念があります。

ベトナムからの輸入品には最大46%の関税が予定されており、ファーストリテイリングの北米事業にとっては無視できない数字です。ただし、すでに多くの商品を米国内に在庫として確保しており、会社側は利益への影響は下期で2〜3%程度にとどまると見ています。

柳井会長の見解と国際社会への警鐘

柳井正会長は「今の国際情勢から考えると、高関税政策は無理がある」と明言しています。その理由として、世界中で生産分業が進んでいる現状では、一国だけが利益を得ようとする政策は機能しにくいからです。

「アメリカがすべてを独占するのはあり得ない」と柳井会長は述べ、保護主義がもたらす孤立化のリスクに警鐘を鳴らしました。ファーストリテイリングは生産地を柔軟に変更できる体制を整えており、世界の変化に対応できる企業の姿勢が示されています。

将来に向けたグローバル戦略

ファーストリテイリングは、今後も持続的に成長するために複数の戦略を進めています。

  • 生産拠点の多様化:「チャイナプラスワン」戦略から、アジア全体に広がる柔軟な供給体制へと移行しています。
  • グローバル経営の強化:ニューヨークに本部機能を集約し、現地経営者に裁量を与える体制を構築中です。
  • 人材育成の推進:経営者候補や店舗スタッフの育成を重視し、企業全体の力を底上げしています。

これらの施策を通じて、売上高5兆円、さらには10兆円という長期目標を掲げています。

まとめ
  • 最高益を更新:国内外での販売が好調で、歴代最高の営業利益を達成見込み
  • 関税の影響は限定的:高関税には柔軟な生産地変更などで対応可能
  • 国際分業の重要性:保護主義的な政策では世界経済の流れに逆らえない
  • セグメント別に成長のばらつき:ユニクロ中心に好調だが、ジーユーや他ブランドには課題も
  • 将来を見据えた戦略:グローバル経営と人材育成に注力し、長期的成長を目指す

関税は、企業のコストや商品の価格に大きく関わる政策です。なぜ関税があるのか、どんな国に影響が出るのかを考えてみることで、ニュースの見方も変わってくるかもしれません。
ユニクロの商品がどこで作られて、どのように世界中に届けられているかを調べてみると、国際貿易のしくみがより身近に感じられるでしょう。身の回りのモノをきっかけに、グローバル経済に興味をもってみませんか?