AI企業オルツの粉飾決算疑惑
「オルツに粉飾決算〈疑惑〉── 決算書で光った“異常値”を読み取れたか?
パーソナルAI銘柄オルツの決算延期で浮上した粉飾決算〈疑惑〉を追跡。キャッシュフローと売掛金から不正リスクを見抜くポイントを初心者向けに解説します。初心者チェックリスト付き。
AI開発企業「オルツ(Altz:260A)」が、上場からわずか半年で「粉飾決算疑惑」により第三者委員会を設置し話題となりました。
粉飾決算とは、会社の成績を実際よりも良く見せるために決算書を偽る行為です。これは単なる「数字のごまかし」ではなく、株主や取引先、従業員など多くの関係者に影響を与える重大な問題です。
なぜ不正が起こるのでしょうか?また、どのように発覚し、どのような影響を及ぼすのでしょうか?実際の事例から学び、粉飾決算の仕組みを理解していきましょう。
粉飾決算とは?
決算書のウソとは?
粉飾決算とは、会社が自分たちの経営状態を実際よりも良く見せるために、意図的に決算書の数字を操作することです。例えば、売れていない商品を「売れた」と記録したり、存在しない取引を作り出したりして売上や利益を水増しします。
企業がこのような不正を行う目的は「株価を上げる」「銀行から融資を受けやすくする」「上場を達成・維持する」などです。しかし、これらは投資家を欺く行為であり、明確な犯罪です。
粉飾の代表的な手口
- 架空売上計上:存在しない売上を記録する
- 循環取引:複数の会社間で商品を回して売上を水増しする
- 在庫の過大計上:実際にはない在庫をあるように見せる
- 売掛金の過大計上:回収見込みのない売掛金を資産として計上する
オルツ事件の概要
オルツとは?
オルツは、AI技術を活用した「AI GIJIROKU」などのサービスを展開するベンチャー企業です。2024年に東証グロース市場に上場し、「5年で時価総額1兆円」という目標を掲げていました。
疑惑発覚の経緯
2025年4月25日、オルツの粉飾決算疑惑が表面化しました。証券取引等監視委員会による調査で、「AI GIJIROKU」の有料アカウントについて、実際には利用されていない注文が売上として計上されている可能性が判明しました。
さらに、売上は増加しているのに現金が増えていない、売掛金の回収期間が異常に長いなどの不審点も浮上しました。元社員による内部告発も問題を拡大させる要因となりました。
第三者委員会の設置
オルツは、問題解決のために利害関係のない弁護士や公認会計士による第三者委員会を設置しました。委員会の主な目的は次の通りです。
- 売上計上に関する事実関係の解明
- 過去の連結財務諸表への影響の検討
- 原因分析と再発防止策の提言
この影響で、第1四半期決算の開示も延期されました。
以下は個人投資家 田端信太郎さんがオルツの元社員の方と話している動画です。
過去の粉飾決算事件
エフオーアイ事件:上場半年で発覚した巨額の架空売上
半導体製造装置メーカーのエフオーアイは、2009年に東証マザーズに上場しましたが、上場から半年で売上高の97%(約118億円)が架空であることが発覚し、上場廃止となりました。匿名の告発が東証と主幹事証券会社に届けられ、証券取引等監視委員会の強制捜査で事実が明らかになりました。
シニアコミュニケーション事件:監査法人をだました巧妙な手口
シニアコミュニケーションは、上場の2年前から粉飾決算を行い、売掛金の長期化や架空売上の計上をしていました。さらに、監査法人の残高確認状を郵便局で回収し、偽造して返送する手口で監査をかいくぐっていました。最終的に上場から4年半で上場廃止となりました。
プロデュース事件:循環取引で売上を水増し
プロデュースでは、社長と公認会計士が共謀し、循環取引により売上高を116億円も水増ししました。発覚後、上場から2年10ヶ月で上場廃止となりました。
DLE事件:長期間続いた不正
アニメ制作会社DLEは、2014年の上場から2018年まで複数年にわたり粉飾決算を行っていました。売上や利益を実際よりも多く見せ、特設注意市場銘柄に指定されながらも、最終的に上場維持が認められました。
粉飾決算を見抜くために
不正を見抜くためのチェックポイント
粉飾決算を見抜くには、次のような兆候に注目するとよいとされています。
- 売上が増加しているのに現金が増えていない
- 売掛金や在庫が急増している
- 特定の取引先への依存度が異常に高い
- 営業キャッシュフローが恒常的にマイナス
こうした兆候は、不正を早期に察知する手がかりになります。

粉飾決算が社会に与える影響
粉飾決算が発覚すると、株価が急落し、投資家に多大な損失をもたらします。さらに、銀行や取引先の信頼を失い、従業員の雇用も脅かされます。市場全体の信用が低下し、経済全体にも深刻な影響を与える恐れがあります。
まとめ
- 粉飾決算は企業の信用を揺るがす重大な不正行為
- オルツ事件では、売上の過大計上が疑われている
- 過去の事例では、多くの企業が上場廃止に追い込まれた
- 数字の異常に早く気づくことが不正発見のカギ
- 粉飾決算は企業だけでなく、社会全体にも悪影響を及ぼす
企業がウソをつくのは絶対に許されることではありません。しかし、私達も企業の数字や発表を鵜呑みにせず、「なぜ?」と疑問を持つ習慣を持つことも大事ではないでしょうか。
将来、投資家や社会人として活躍する際にも、「数字の裏側」を見る目は必ず役立ちます。日ごろからニュースや決算情報に触れ、経済の仕組みを理解する努力を続けましょう。私たち一人ひとりの「見る目」が、健全な社会を支えているのです。