エルメスがアメリカでさらに値上げ決定:高級ブランド値上げと関税の関係
仏エルメス、米で関税を価格転嫁へ 第1四半期は予想下回る7%増収 | ロイター
フランスの高級ブランド、エルメスが17日発表した第1・四半期の売上高は市場予想をわずかに下回った。中国の販売が引き続き低迷した。
「エルメスのバッグや財布はただでさえ高いのに、これからもっと値上がりするの?」そんな悲鳴も聞こえてきそうです。
2025年5月、フランスの高級ブランド・エルメスがアメリカ市場で大幅な価格引き上げを発表しました。背景には「関税」という国際的な税の仕組みが関係しています。さらに、中国市場では売上の伸び悩みも報じられています。
エルメスの動向を通じて、関税が商品価格に与える影響や高級ブランドと世界経済のつながりを考えてみます。
エルメスのアメリカ値上げ、その背景とは?
2025年5月1日から、エルメスはアメリカで全商品をさらに値上げすると発表しました。この決定の背景には、アメリカ政府がヨーロッパからの高級品に新たな「関税」を課したことがあります。
関税とは、海外から輸入される商品にかける特別な税金です。企業はこの税負担を商品価格に上乗せするため、結果として消費者がその分を負担することになります。
エルメスは年初にも6〜7%の価格改定をしていましたが、今回はさらに約10%の追加値上げとなりました。
なぜ関税をかけるのか?その影響とは
関税は主に、自国の産業を守ることや貿易のバランスを調整する目的で導入されます。
たとえば、アメリカは自国のブランドや産業を保護するために、ヨーロッパの高級ブランドに関税をかけています。関税がかかると、海外製品の価格は上昇し、国内製品が相対的に選ばれやすくなります。
しかし、エルメスのような高級ブランドはブランド力が強く、価格が上がっても購入する層が存在するため、企業は関税分を価格に反映しやすいのです。その結果、最終的な負担は消費者にのしかかることになります。
高級ブランド全体に広がる影響
エルメスの値上げは、他の高級ブランドにも波及しています。ルイ・ヴィトン、シャネル、グッチなども、関税や原材料費の高騰を理由に、アメリカや中国での値上げを検討中です。ブランド力が強い企業ほど価格転嫁がしやすい一方で、消費者の購買意欲の低下というリスクもあります。特に、エルメスほどの知名度を持たないブランドは、値上げによる売上減少に直面する可能性が高いといえます。
中国市場で売上が伸び悩む理由
エルメスは世界的には好調な売上を維持していますが、中国市場では伸び悩みが見られます。その要因は以下の通りです:
- 経済成長の鈍化により高級品への支出が減少
- 景気回復の遅れや不動産市場の低迷で消費が慎重に
- 「控えめなぜいたく(クワイエット・ラグジュアリー)」志向の広がり
- 海外旅行の再開により、国外での購入が増加
- 2023年の特需の反動で2024年は売上が伸びにくい傾向に

値上げが消費者行動に与える影響
アメリカでの値上げを受けて、消費者の行動にも変化が見られます。特に、ヨーロッパ旅行の際に現地で高級ブランド品を購入する人が増加しています。ヨーロッパではアメリカよりも関税の影響が小さく、同じ商品でも安く買えるためです。
また、中国でも「価値がある」と考える消費者は購入を続けていますが、全体としては高額商品の購入を控える動きが見られています。
他のハイブランドも値上げ?
最近では、ルイ・ヴィトンやシャネルもアメリカや中国で値上げを発表しました。日本においても円安やインフレの影響により、高級品の価格上昇が懸念されています。今後も関税政策や経済環境の変化によって、ブランド各社の価格戦略は変わっていくと考えられます。
まとめ
- エルメスはアメリカで関税分を上乗せし、大幅な値上げを実施
- 関税は国内産業保護を目的とし、最終的には消費者が負担
- 高級ブランド全体に価格転嫁の流れが広がっている
- 中国では消費マインドの変化が売上に影響
- 値上げによりブランドごとの戦略や競争力が問われる時代に
エルメスの値上げは、関税や為替、ブランド力といった経済の要素が密接に関係していることを教えてくれます。なぜ高級ブランドは値上げしても買われるのか?消費者はどのように行動を変えるのか?こうした視点を持つことで、経済やビジネスの仕組みをより深く理解できます。
普段目にする商品の価格にも、国際的な仕組みや企業戦略が関係していることを、ぜひ考えてみてください。