強制捜査開始:株価は9分の1まで暴落したオルツの粉飾疑惑

本日の一部報道について - alt

各 位  本日、朝日新聞朝刊において、当社が循環取引という手法で決算を粉飾し、売上の7割を水増しした可能性がある旨の報道がなされました。  2025年4月25日付け「第三者委員会設置及び2025年12月期第1四半期決算短 […]

2025年6月、生成AIで注目を集めたオルツが、売上高の約7割にあたる約40億円を水増しした疑いで証券取引等監視委員会の強制調査を受けました。
疑惑の手口は「循環取引」と呼ばれる不正手法です。広告費として支払った資金が複数の会社を経由して再びオルツの売上に計上されていたとされます。
調査は継続中で、疑惑はまだ確定していません。循環取引の仕組みから株価への影響、過去の類似事例までを見てみましょう。

オルツの企業概要
  • 設立: 2014年
  • 事業内容: 会議の音声を自動で文字化するAIツール「AI GIJIROKU」を提供
  • 上場: 2024年10月(東証グロース市場)
  • 公表売上: 2024年12月期に約60億円
  • 利用企業数: 約9,000社(2025年1月時点)

上場後は生成AIベンチャーとして期待が高まり、株価は一時800円超まで上昇しました。

売上水増し疑惑の詳細:循環取引の仕組み

循環取引とは
複数の企業が実態のない売買を繰り返し、書類上だけでお金を動かして売上を水増しする手法です。実際にサービスや商品が提供されていなくても、取引があったように見せかけます。

オルツが疑われている方法

  1. オルツが広告会社ADKに約1.2億円を支払う
  2. ADKが手数料を引き、販売会社に約1.1億円を渡す
  3. 販売会社がさらに手数料を差し引き、約1億円をオルツの売上として計上

この流れで広告費が売上に戻り、実態のない取引で約40億円の売上が水増しされたと疑われています。

オルツのプレスリリース
株価への深刻な影響
日付株価主な出来事
2025/2/19731円上場後初の高値記録
2025/4/25約337円強制調査開始・疑惑公表
2025/6/281円年初来安値更新
2025/6/5–6120円→94円売買活発化と追加下落

上場後わずか数カ月で株価は約9分の1に下落し、多くの投資家が大損害を被りました。

過去の類似事例:教訓を学ぶ
企業名年度不正内容結果
メディア・リンクス2004架空取引による売上水増し上場廃止・社長実刑
加ト吉(現テーブルマーク)2008大規模不正会計元常務に懲役7年
東芝2015利益水増し2023年に上場廃止

いずれの企業も経営陣への処罰や上場廃止という厳罰が下され、企業価値と信用を大きく失いました。

なぜ不正会計は起きるのか?背景にあるプレッシャー
  1. 株価維持のプレッシャー:投資家の成長期待に応え続けなければ、株価が急落する恐れがある
  2. 融資確保の動機:高い業績を示すことで銀行融資を受けやすくする
  3. 社会的信用の維持:取引先や顧客からの信頼を失わないために数字を良く見せたい
  4. 経営者のインセンティブ:ボーナスや報酬、地位を守るために短期的利益を追求

しかし、粉飾決算は法律違反であり、発覚すれば企業の存続にかかわる深刻なリスクを招きます。

現在の状況と今後の展望

オルツは現在、証券取引等監視委員会の強制調査と第三者委員会の調査を受けており、疑惑はまだ確定していません。調査結果次第では上場廃止や経営陣への法的処分が想定されます。

まとめ

  • オルツは売上の約7割を水増しした疑いで調査中
  • 株価は上場後数カ月で約9分の1に暴落
  • 過去事例でも上場廃止や刑事処分が実行された

企業ニュースを読むときは、発表される数字だけでなく、その裏にある取引の仕組みやガバナンス体制に注目しましょう。複数の情報源を比較し、客観的に判断する批判的思考を養うことが重要です。将来、ビジネスや投資の場で活躍するには、情報を正確に読み解く力と高い倫理観が求められます。