コーヒーが高すぎる!? 日米で広がる価格差と関税ショック
私たちの生活に欠かせないコーヒー。2025年の今、その価格が世界中で上がっています。
アメリカでは前年比20%以上、日本でもスターバックスやキーコーヒーが相次いで値上げを発表しました。なぜ、いつも飲んでいる一杯がこれほど高くなっているのでしょうか。コーヒーの歴史、日米の価格や賃金の違い、そして背景にある経済の仕組みから考えてみましょう。
コーヒーの起源と世界への広がり
コーヒーの物語はエチオピアから始まります。6世紀頃、ヤギ飼いの少年カルディが赤い実を食べたヤギが元気になるのを見つけたことがきっかけといわれています。
その後、修道僧たちがその実を煮出して飲むようになり、眠気を覚ます効果が知られるようになりました。15世紀にはイエメンで飲用文化が広まり、17世紀にはヨーロッパに伝わります。ベネチアでは最初のコーヒーハウスが誕生し、人々の交流の場となりました。
オランダ人がジャワ島で栽培を始めたことで、コーヒーは南米やアフリカにも広がり、今では世界中で愛される飲み物になっています。
世界的な価格高騰の背景
コーヒーの価格が高騰している主な理由は、気候変動、貿易政策、需要の増加の3つです。
① 気候変動による生産減少
ブラジルやベトナムでは干ばつや異常高温が続き、コーヒー豆の生産量が大きく減りました。その結果、アラビカ種の価格は2025年初頭に1キログラムあたり約9ドルに達しています。
② 関税と輸送コストの上昇
アメリカでは、ブラジル産に50%、ベトナム産に20%の関税が課され、供給が混乱しました。さらに、燃料費や輸送コストの上昇も追い打ちをかけ、原料価格が上がっています。
③ 需要の増加と在庫の減少
世界的にコーヒーの需要は伸び続けています。特に、質の高い「スペシャルティコーヒー」人気が高まり、生産が追いつかない状況です。需要と供給のバランスが崩れ、価格が上昇しているのです。
アメリカと日本、それぞれのコーヒー事情
アメリカでは
アメリカでは、2025年5月時点でコーヒー豆1ポンド(約450g)の平均価格が7.93ドル(約1,170円)まで上昇しました。コーヒーはアメリカ人の66%が毎日飲むといわれ、物価上昇は家計に直接影響しています。関税の影響により卸売価格がさらに上がり、カフェの店頭価格にも波及しています。
日本では
日本でもコーヒー豆の価格上昇が続いています。2025年10月の時点で、キーコーヒーやUCCは10〜30%の値上げを実施しました。スターバックスも家庭用豆を最大300円値上げしています。
さらに円安が進み、1ドル=150円前後となっているため、輸入コストが増加。豆の仕入れ価格が高騰し、家庭やカフェの価格にも反映されています。
日米の価格と賃金の関係
アメリカの物価は日本よりもおよそ1.5〜2倍高いとされています。しかし、平均年収は日本が約490万円に対し、アメリカは約1,240万円と2.5倍近くあります。最低賃金も東京が1163円に対し、カリフォルニア州では16.5ドル(約2290円)。つまり、アメリカではコーヒーが高くても、所得に対する負担は日本より軽いのです。

コーヒーの一杯から見える経済の仕組み
コーヒーの値上がりは、単に「豆が高くなった」だけではありません。そこには、気候変動、国際貿易、為替、賃金といった複雑な経済の動きが関係しています。日常の中にある商品ひとつにも、世界の出来事が影響しているのです。
まとめ
- コーヒー価格の上昇は気候変動や関税、円安が原因
- 日本では主要メーカーが10〜30%の値上げを実施
- アメリカでは賃金が高く、負担感は比較的軽い
- 世界の出来事は日常の買い物にも影響を与える
コーヒーの値段は、世界の経済を映す鏡です。もしお気に入りのカフェのコーヒーが値上がりしたら、「なぜ?」と考えてみてください。気候、為替、国際関係――その裏には必ず理由があります。身近な商品の価格変化をきっかけに、経済ニュースや世界の仕組みに目を向けてみましょう。きっと“日常の中の経済”が、少し身近に感じられるはずです。