クリスマス「予定なし」が過去最多:物価高でケーキの値段も上がる

株式会社インテージのプレスリリース(2025年12月12日 11時00分)クリスマス“予定なし”54% 前年から3ポイント増

12月は、日本でも世界でも「お金が大きく動く月」です。日本ではボーナスの支給時期と重なり、クリスマスや年末年始の準備が進むことで、小売売上が年間でも高い水準になりやすいことが統計から分かっています。公的データは「クリスマスだけ」の消費を切り分けていませんが、11月から12月にかけて売上が伸びる年が多く、その中にはプレゼントや食品、装飾品などの支出が含まれています。
世界に目を向けると、アメリカを中心とした「ホリデーシーズン(11〜12月)」は小売業界にとって最大の繁忙期です。全米小売業界団体は、2025年のホリデー売上が1兆ドル(約160兆円・1ドル160円換算)を超えると見込んでいます。

街がきらめく一方で、株式会社インテージの調査では「クリスマスは特に予定がない」という回答が過去最高の54.1%に達しています。物価高が続くなか、ケーキの値上げや買い方の変化も進んでいます。クリスマスの小さな選択は、家計だけでなく、価格や競争、年末の景気とどのようにつながっているのでしょうか。

「予定なし」が増えた背景

同調査では、クリスマスのイベントについて「予定はない」が前年差3.0ポイント増え、過去最高水準になりました。平均予算は16,418円で前年比0.5%増でしたが、物価上昇を考えると実質的な支出は抑えられています。理由としては「興味がない・習慣がない」が最多で、「節約したい」が続きました。

この動きは、年末商戦が必ずしも派手な消費一色ではなく、日常重視や支出の選別が進む局面にあることを示しています。

株式会社インテージ
プレスリリースより
クリスマスケーキ値上げの仕組み

帝国データバンクの調査では、オリジナルケーキの平均価格は税抜き4,740円で、前年比179円、3.9%上昇しました。値上げの背景には主に以下があるとされています。

  • イチゴ:猛暑などで生育が不安定
  • :生産コスト増に加え、鳥インフルエンザの影響による供給懸念
  • カカオ:国際価格の上昇
  • 包装資材:資材価格の上昇
  • 配送費:物流コストの上昇

これらが重なり、2021年比では約900円の上昇に迫るとされています。

重要なのは、価格上昇が一つの理由ではなく、原材料、物流、エネルギーといった複数のコスト増が積み重なった結果である点です。別の調査でも、2023年に主要ブランドのクリスマスケーキ価格が上昇したことが伝えられており、値上げが複数年にわたって続いてきたことが確認できます。
価格が上がると、同じ予算で選べる量や内容が変わり、消費の形も変化します。

株式会社インテージ
プレスリリースより
売り場の広がりと買い方の変化

日本のクリスマスケーキは、街の洋菓子店だけでなく、百貨店やホテル、スーパー、コンビニの予約販売など、さまざまな売り場で提供されています。コンビニは早くから予約型販売を定着させ、百貨店やホテルは限定商品や高付加価値商品で差別化を進めてきました。

近年は、冷凍配送を含むオンライン購入や、アレルギー対応、ヴィーガン対応といったニーズ別の商品も目立ちます。日本の食品小売は実店舗が中心とされますが、オンライン販売も拡大しており、ケーキでも購入手段が多様化しています。価格上昇を受けて、手作りや節約型に切り替える動きが報じられている点も、消費行動の変化として注目されます。

市場規模と年末経済との関係

市場調査によると、日本のケーキ市場は2022年時点で約2,400億円と推計されています。クリスマスケーキはこの中でも季節需要として位置づけられ、原材料や物流費の影響を受けやすい商品です。

世界を見ると、アメリカではホリデー期のオンライン消費が2024年に2,414億ドル(約38兆6,000億円・1ドル160円換算)で過去最高という分析があります。2025年の見通しでも、年末の小売売上は前年を上回るとされ、年末消費が経済の重要なイベントであることに変わりはありません。

まとめ
  • クリスマス予定なしは54.1%で過去最高
  • 平均予算16,418円は実質横ばい
  • ケーキ平均価格は4,740円に上昇
  • 原材料と物流費が値上げ要因
  • 売り場はコンビニ百貨店通販まで拡大
  • 節約と多様化が同時に進んでいる

クリスマスケーキの値上げは、イチゴや卵、カカオ、物流費といった供給側のコストが価格に反映される例として整理できます。同時に、「予定なし」が増えたという数字は、家計が支出を選別し、消費行動が変わっていることを示しています。

次にニュースを見るときは、①何が値上がりの原因なのか、②その結果、買い方がどう変わったのかを分けて考えてみてください。そして問いです。あなたの家では、ケーキに払うお金は、味、大きさ、買う場所、安心のどれに一番使われていますか。