最高裁で「違法判断」後、それでも動くトランプ関税“第2ラウンド”
米国、新関税10%徴収開始 15%へ後日引き上げか | ロイター
米税関・国境警備局(CBP)は24日から「1974年通商法122条」に基づき、10%の関税の徴収を開始したと発表した。税率はトランプ大統領が20日に発表した水準で、同氏が21日に言及した15%ではなかった。
2026年2月、アメリカの関税政策で「止まる動き」と「新しく動き出す動き」が同時に起きています。連邦最高裁判所は、大統領トランプ氏がIEEPA(国際緊急経済権限法)を根拠に導入した関税について、法律が関税権限まで認めていないとして無効と判断しました。 その結果、この枠組みでかけられていた一部の追加関税は、徴収停止と返金の対象になりつつあります。
一方で、トランプ政権は通商法122条という別の法律を使い、世界からの輸入品の多くに一律の新関税を課す措置を開始しました。 さらに、鉄鋼などで使われてきた通商拡大法232条をもとに、大型バッテリーなど6つの産業への「国家安全保障関税」を検討していると報じられています。 「違法判決」で何が止まり、「新制度」で何が続き、どの国や産業にどんな影響が出ているのでしょうか。
Q. 最新の研究によると、トランプ政権の関税コストのうち、アメリカ側(輸入業者と消費者)が負担している割合として、最も近いものはどれでしょうか。
A. 50%前後
B. 70%前後
C. 95%前後
→正解は「C. 95%前後」です。
キール世界経済研究所などの分析では、関税コストの約96%をアメリカの輸入業者と消費者が負担していると報告されています。
「外国に払わせる」というイメージと、データで確認された負担割合にはギャップがあります。
最高裁が線を引いた「ここから先はダメ」
連邦最高裁は2026年2月20日、IEEPA(国際緊急経済権限法)を使って広範な関税を課したトランプ政権の措置について、「IEEPAは関税を課す明確な権限を与えていない」として無効と判断しました。
- 学習教材メーカーなどが起こした訴訟で、裁判所はIEEPAが輸入の「規制」を想定している一方、「関税」という税の設定まで含むとは読めないとしました。
- 判決は、関税が憲法上の課税権と結びつく重要な権限であり、議会の明確な授権が必要だという点を強調しています。
これにより、IEEPAを根拠にしたトランプ政権の関税プログラムは、今後の枠組みとしては使えなくなりました。 CBP(アメリカ合衆国税関・国境警備局)は、IEEPAにもとづく関税の徴収を2026年2月24日午前0時1分(米東部時間)から停止すると通知しており、無効とされた関税の徴収が止まるスケジュールが示されています。
止まる関税、残る関税──“根拠法”で分かれる運命
IEEPAが使えなくなったからと言って、アメリカの関税政策全体が終わるわけではありません。関税には複数の根拠法があり、今回の判決はそのうちIEEPAベースの枠組みだけを直接対象にしました。
- 通商拡大法232条(国家安全保障関税)
鉄鋼・アルミなどに対する既存の関税はこの条文を根拠としており、今回の判決の対象外です。 - 通商法301条(不公正貿易への対抗)
中国などに対する知的財産権問題などを理由にした関税も、別の法律にもとづいており、そのまま維持されています。 - 通商法122条(国際収支を理由とする暫定関税)
今回新たに使われたのがこの条文で、トランプ政権はIEEPA関税の穴を埋める形で、世界からの輸入品に10%の一律関税をかける大統領布告を出しました。
一方、IEEPAベースで徴収されていた関税については、ペンシルベニア大学ウォートン校などの試算で、1,750億ドルを超える関税収入が返金の対象になりうるとされています。
返金の具体的な範囲や手続きは、企業ごとの抗議手続や訴訟などを通じて、今後裁判所と税関実務の中で詰められていきます。
世界一律10%の正体──122条が動かす関税スイッチ
ホワイトハウスのファクトシートや大統領布告によると、通商法122条にもとづく新関税は、次のように説明されています。
- 1974年通商法122条に基づく「暫定的な輸入付加税」として、150日間、輸入品に10%の追加関税を課す。
- 条文上、税率は最大15%まで引き上げ可能。
- 名目上の目的は、「重大な国際収支の問題」への対処。
- 一部品目(特定の医薬品、航空機部品、国内で十分に生産されていない資源、一部農産品など)は除外される。
、CBPは2026年2月24日から、この10%関税の徴収を開始しました。 トランプ大統領は20日に10%案を公表し、翌21日に15%への引き上げに言及しましたが、24日時点で実際に徴収されているのは10%だと伝えられています。
この「世界一律」関税は、制度上はほぼすべての国を対象にしますが、実際の影響はアメリカへの輸出が多い国ほど大きくなります。2025年前後の統計では、アメリカの主要な輸入相手国として、メキシコ、中国、カナダ、ドイツ、日本、韓国、ベトナム、インドなどが挙げられています。
IEEPA関税が無効になったことで、これまで高率のIEEPA関税の対象だった一部の国・品目では負担が軽くなる一方、同盟国や先進国の一部では、「従来より高い一律税率」を適用される分析も出ています。

次の照準はどこ?232条で浮上した「6つの産業」
ロイターなどの報道では、トランプ政権が通商拡大法232条を使い、次の6つの産業に新しい「国家安全保障関税」を検討していると伝えられています。
- 大型バッテリー
- 鋳鉄・鉄製金具
- プラスチック製配管
- 工業用化学品
- 電力網機器
- 通信機器
これらは、EV(電気自動車)向け電池や送電インフラ、通信ネットワークなどに関わる産業であり、既存の鉄鋼・アルミ関税と同じ232条を使う形で検討されています。 実際にどの品目・どの国を対象にするかは調査の内容次第ですが、供給国が限られている品目も多く、対象の決め方によって特定の国や企業に影響が集中しうる構造です。
関税は結局、だれが負担している?
関税は輸入時にアメリカ側の輸入業者が支払う税で、誰が実際の負担を負っているのかはデータで分析されています。
ドイツのキール世界経済研究所などの最新研究では、トランプ政権の関税コストの約96%をアメリカの輸入業者と消費者が負担し、外国輸出企業の負担は約4%にとどまると報告されています。 25百万件以上、約4兆ドル分の輸入データを分析した結果、関税は「海外企業への税」ではなく、「アメリカ国内の消費税のように機能している」と説明しています。
NBERやIMFの研究でも、関税導入後に輸入価格が関税分ほぼそのまま上昇し、外国側の大幅な値下げは限定的だったとされ、アメリカ国内の企業と家計が主要な負担者になっていることが確認されています。
まとめ
- 最高裁はIEEPAを根拠とするトランプ政権の関税を無効と判断
- CBPはIEEPAにもとづく関税の徴収を停止し、返金が論点
- 通商法122条にもとづく一律10%関税が2月24日から徴収開始
- トランプ大統領は15%への引き上げに言及し、後日実施の可能性が報じられている
- 一律関税は、メキシコ、中国、カナダ、日本、EU諸国、韓国、ベトナム、インドなど、アメリカ向け輸出が大きい国ほど影響が出やすい
- 232条を使った大型バッテリーなど6産業への追加関税検討も報じられている
- 研究では、関税コストの大部分(約96%)をアメリカの輸入業者と消費者が負担
今回の動きは、「違法とされた関税が止まる一方で、別の法律にもとづく関税が動き出す」という二つの流れを同時に示しています。 しかも、新しい一律10%関税は期間150日、最大15%まで拡大可能という設計になっており、対象国を限定しないぶん、アメリカへの輸出規模に応じて影響の濃淡が変わる構造を持ちます。
ここから、次のような点を意識してニュースを追うことができます。
- 新しい関税が出てきたとき、その根拠法はIEEPAなのか、122条なのか、232条なのか、301条なのか
- どの国・どの産業が対象になっているのか、アメリカへの輸出の大きさはどれくらいか
- 関税の「目的」と、研究が示す「実際の負担者(企業・家計)」にどんなギャップがあるのか
次の関税ニュースでは、「税率はいくらか」だけでなく、「どの法律にもとづき、どの国や産業に適用され、誰が負担しているのか」というポイントをセットで確認してみてください。これが、制度の仕組みと現実の影響を結びつけて理解するための手がかりになります。


