はじめに
教育資金の話は、「いくらかかるのか」「何を選べばいいのか」から考え始めると、かえって不安が大きくなりがちです。
この特集では、貯金・学資保険・投資・習い事といった個別の手段を比べる前に、教育とお金をどう整理して考えるかを、会話を通じて掘り下げていきます。
全10回を通して、家庭ごとの価値観や家計に合った「教育資金の考え方」を見つけることを目指します。それぞれの家庭において「納得できる」判断軸をつくるための特集です。
特集記事「教育資金」記事一覧
【特集:教育資金】#10 教育資金と老後資金 ― どちらも守るための考え方
教育資金について考え続けてきたこの特集も、いよいよ最後です。ここまで、教育費の山や準備のしかた、配分、習い事や塾との向き合い方を整理してきました。その先で、多くの家庭が行き着くのがこの問いです。「子どもの教育費を大切にしたい。でも、自分たちの老後はどうなるのか」。
この回では、日本と海外の教育資金・教育投資の“当たり前”を比べながら、教育費と老後資金を対立させずに考える視点をまとめます。
日本では「教育費は親が出すもの」になりやすい

ここまで整理してきて思ったんだけど、日本って教育費に対して親の責任がすごく重いよね。進学費用も生活費も、「親が用意して当然」みたいな空気がある。ワタシ自身も、できるだけ子どもにお金の心配をさせたくないって思ってしまう。

ボクも同じ感覚です。教育費は親が払うもの、という前提が強いから、老後資金より教育費を優先してしまいがちです。
ただ、その結果として老後が不安定になる家庭も多いと聞くと、本当にそれが正しいのか迷います。

日本では、教育費を「家庭内で完結させるもの」と考える文化が強いの。だから、教育費と老後資金が真正面からぶつかりやすくなる。
海外では「教育と老後」を分けて考える

海外だと、教育費の考え方ってそんなに違うの?

ええ。たとえば欧米では、大学進学時に奨学金や学生ローンを使うことが一般的で、教育費をすべて親が負担する前提ではないわ。
その分、親は老後資金を優先して準備する。

ということは、教育費を抑えているというより、「役割を分けている」感じですね。

その通りよ。親は生活基盤と老後を守る、子どもは進学に伴う一部のコストを将来の自分の投資として負担する。そこが日本との大きな違いよ。
日本で同じことはできるのか?

でも、日本で海外と同じやり方をそのまま真似するのは難しそうだよね。奨学金の返済が重いとか、就職状況とか。

ボクもそこが気になります。海外比較を聞くと理屈は分かるけれど、日本の賃金水準や雇用の安定性を考えると、子どもに負担を寄せすぎるのも不安です。

だから、日本では「海外型」か「日本型」かの二択ではなく、中間の設計が現実的なの。親がすべてを背負うわけでもなく、子どもに丸投げするわけでもない。そのバランスをどう取るかが、日本の家庭のテーマになるのよ。
教育費と老後資金を同じ地図で見る意味

ここで改めて思うのは、教育費だけを切り出して考えるから苦しくなるんだね。

はい。教育費の「山」だけを見ると、どうしてもそこに全力投球したくなる。でも老後資金という「長く続く支出」を同時に見ないと、家計全体が歪みます。

海外では最初から「老後は親の責任」「教育は社会や本人も一部を担う」と分けられていることも多いの。日本ではそれが曖昧だからこそ、家計の中で意識的に線を引く必要があるのよ。
日本の家庭にとっての現実解

じゃあ、日本の家庭にとっての現実的な落としどころって何だろう。

ポイントは次の3つね。
- 老後資金を削らないこと
- 教育費に上限を持たせること
- 足りない部分をどう補うかを事前に話しておくこと

教育費を「全部出すか、出さないか」ではなく、「どこまで出すか」を決める、ということですね。それなら、老後資金との両立も現実的に考えられそうです。
今回のまとめ
- 日本は教育費を親が背負いすぎやすい
- 海外では教育と老後の役割分担が明確
- 日本では中間的な設計が現実的
- 教育費と老後資金は、同じ家計地図で見る必要がある

海外と比べることで見えてくるのは、「日本のやり方が間違っている」という話ではありません。違う前提で動いている、という事実です。その前提を知ったうえで、自分の家庭に合う形を選ぶこと。
それが、教育費と老後資金を両立させる一番の近道なのよ。
全10回を終えて...

正直に言うと、最初は「教育費って、とにかく貯めるか増やすかの話でしょ?」くらいに思ってた。でも10回通して一番大きかったのは、順番を間違えると不安が増えるってことだったな。
教育費にはピークがあって、その山を知らないまま動くと、学資保険もNISAも「なんとなく不安」で選ぶことになる。逆に、山と家計の全体像が見えたら、「ここは守る」「ここは増やす」「ここは柔軟にする」って考えられるようになった。
海外の話も含めて感じたのは、日本は親が全部背負おうとしすぎる国だってこと。でも、それを知ったうえで、家庭ごとにちょうどいいバランスを探せばいい。ワタシは、貯金だけに閉じずに、考えて使い分けること自体が教育なんだと思うようになった。

ボクはずっと、「結局は貯金が一番安全なんじゃないか」と思っていました。投資や保険の話を聞くほど、不安になることも多かったです。でもこの特集を通して分かったのは、不安の正体は商品ではなく、全体像が見えていないことだった、という点です。
教育費の山、老後資金との関係、家計の役割分担を整理していくと、「貯金だけでいいのか」「どこまで貯金で守るのか」を冷静に考えられるようになりました。
特に印象に残っているのは、教育費を優先しすぎると、結果的に子どもに負担が戻る可能性がある、という話です。慎重でいること自体は大事だけれど、考えない慎重さはリスクになる。今はそう感じています。

この特集で一貫して伝えたかったのは、「教育資金に正解はない」ということです。
あるのは、順番・整理・対話。
教育費は高いから不安なのではなく、「いつ・どれくらい・何のために使うか」が整理されていないから不安になる。日本と海外の違いも、優劣の話ではなく、前提の違いです。
親が全部背負う必要もなければ、子どもに丸投げする必要もない。家計の中で役割を分け、限界を決め、足りない部分はどう補うかを話せること。それができれば、学資保険もNISAも、習い事も奨学金も、「怖いもの」ではなくなります。
教育資金を考えることは、お金の話であると同時に、家族の価値観を言葉にする時間でもあります。この10回が、そのきっかけになっていれば嬉しいです。
番外編予告「奨学金」
ここまでの10回で、教育資金についての考え方や整理の順番は一通り見えてきました。ただ、多くの家庭にとって、どうしても避けて通れないテーマが一つ残っています。それが 奨学金 です。
「できれば使いたくない」「でも現実的には気になる」——そんな立ち位置にある奨学金を、借りる・借りないの二択ではなく、教育資金設計の中でどう位置づけるのか。次回の番外編では、海外との違いも踏まえながら、親として知っておきたい考え方を整理していきます。
教育資金の話を“終わらせる”ためではなく、納得して選べる状態をつくるための番外編です。

