大学の経済・経営学部を探検!

梁 晸宇ヤン ジョンウ 先生 【第2部】

※第1部は

教育情報メディア ACTIVE! に掲載しています。

はじめに

こどもと一緒に楽習する教育情報メディア「ACTIVE!」と社会・経済ニュースメディア「キッズノミクス」では、「好奇心を刺激する学び」をテーマに記事の配信に取り組んでいます。
今回は両メディアの共同企画「大学の経済・経営学部を探検!」と題した特集記事をお届けします。立命館アジア太平洋大学(通称APU: Ritsumeikan Asia Pacific University)様から「小・中学生や保護者様等のお役に立てるのであれば、ぜひ受けさせていただきます」とのご厚意により実現しました。

インタビューでは、APU国際経営学部准教授の梁 晸宇(ヤン ジョンウ)先生に、ご担当の会計・ファイナンス講座に対する思いや学生との関わり、そして学びに対する考えについてお話を伺いました。

子育て世代の皆さんにも共感いただける、こどもたちの学びに役立つヒントが詰まったインタビューです。会計やファイナンスの知識はビジネスの基本であり、どの職業にも役立つスキルです。先生の教育アプローチや、子どもたちの学びをサポートするアイデアをぜひお楽しみください。

インタビューにご協力いただいた先生

梁 晸宇(ヤン ジョンウ)先生


立命館アジア太平洋大学(APU)
国際経営学部 准教授

ソウル生まれ。韓国と日本での豊富な学歴とキャリアを持つ経営学の専門家。
韓国の大学で文学を学んだ後、日本の立教大学大学院で経営学修士号を取得。
その後には経営コンサルティングや内部監査の仕事を経て、現在はAPUで国際経営学部の准教授として、会計・ファイナンス分野の教育に従事。

独学で経営学を勉強して念願の先生に

梁先生私は韓国のソウルに生まれて、大学までそこで過ごし、就職も一度しました。しかし、日本に憧れがあって、日本語を少し勉強していました。
留学する時に専攻を何にしようかと悩んだのですが、社会に出てみて経営学を知らないまま会社で仕事をしていると、全体像が見えず目先の作業だけに終始してしまうことが分かりました。それが嫌で、独学で経営学を勉強し始めたのですが、それがとても面白かったのです。

もともとは文学を専攻していて、中学校の先生になるのが夢でしたが、その夢を諦め、経営学をもっと勉強したいと思い、立教大学大学院で2年間修士課程を学びました。そこで、戦略やマーケティングなど、非常に面白いテーマに出会いましたが、正直、会計の授業は一番嫌いでした。ルールが多くて頭が痛くなるし、ひたすら問題を解くというスタイルが苦手でした。

梁先生その後、就職したのは総合系コンサルティングファームで、SCM(サプライチェーンマネジメント)関連のプロジェクトから関わり始めました。その過程で、会計が非常に重要だということを理解しました。

例えば、ERPシステムという企業の基盤システムにおいて、業務活動が記録され、その情報が経営判断に使われることを知り、業務プロセスと会計情報が一体で動いていると理解したのです。それで会計の勉強をやり直すことに決め、専門的な資格を取得し、会計に関連する仕事に就くようになりました。

私の場合、このプロセスには時間がかかりましたが、「いずれ先生になりたい」という昔の夢があり、その結果、APUで学生たちに教えることができるようになり、本当に感謝しています。

学生の目線に合わせた指導

梁先生はい、APUが初めてです。2017年に着任して、今7年目ぐらいですね。

梁先生そうですね。私はなるべく「嫌だな、でも仕方がない」と思うような学生の目線に合わせて授業を進めようとしています。ただし、レベルが上がると少し難しい内容も出しますが、最初はとにかく全体の仕組みを楽しみながら理解してもらうことを目指しています。

ですので、一度会計に触れたことがある学生や、商業高校出身で簿記の勉強を既に終えている学生、あるいは入学前から会計の勉強をしているような学生からすると「先生、このレベル低いのではないですか」と言われることもあります。しかし、入門の授業は全員が理解し喜んで取り組めるように進めることが重要だと思っています。

梁先生基本的には講義形式です。インプットがないと何もできないので、50%くらいはテキストに基づいてしっかり教えることを心掛けています。その中でいろいろな専門用語が出てくるのですが、それをなるべく分かりやすい言葉に置き換えています。
例えば、売掛金とは「売ったのでお金をもらう約束」など、できるだけ具体的に説明しています。

残りの50%はアウトプットの時間です。練習問題が出た時には、まず全員で考えてもらい、できそうな人は前に出て解いてみてもらいます。
その中で、一つ一つの間違いや足りない部分を説明していくことで、全体としてアウトプットする機会が増え、結果的にレベルが上がっていきます。ですので、インプットだけでなくアウトプットも大切にしっかり取り組むように心掛けています。

財務諸表を読み取る力がないと騙されるかもしれない

梁先生たまに学生に「この授業どう?」と聞くことがあります。いろいろな回答が出てくるのですが、テキストの内容は固いけど、口頭でわかりやすく説明し、学生が参画できる場面があるので、やりやすいという声もあります。
一方で、覚えないといけないことが多く、積み上げが必要なので難しいという学生もいます。また、難しいけれど成長していると感じている学生や、「物足りないので、もっと教えてください」という学生もいます。

全員を満足させるのは難しいかもしれませんが、6割から7割くらいの学生は会計を楽しいと感じているようです。

楽しく学べることは非常に重要で、特に会計という分野は一般的には取っ付きにくいイメージがあるので、興味を持って取り組むことが社会に出たときの大きな武器になると思います。

梁先生ぜひ、学生たちには少なくとも簿記3級くらいの知識を身につけてほしいです。就職活動の面接などで財務諸表を見て、自分なりに判断できるようになってほしいですね。

梁先生そうですね。「あなた方がキャリアを決める際に何を見ているのですか?綺麗なウェブサイトや広告を見ていますか?それは上辺だけです。本当の実力は財務諸表にあります。読み取る力がないと騙されるかもしれないよ。」という話を常々しています。

この授業はその力をつけるための第一歩ですから、おろそかにしてはいけません。そして、これから「会計学Ⅱ」や「財務会計論」、「上級会計」など、ビジネスに関連するいろいろな科目が続きます。その中で有価証券報告書の財務情報の探し方や、自分が興味を持った指標を見て考える機会を持ってもらいます。

私も考え方を提示しますが、それを元に「あなたの考えはどうですか?」と問いかけて、他の人に対しても意見を述べるよう促しています。準備ができたチームはクラス全体に対してプレゼンテーションも行います。
私が伝えるだけでなく、自分で考えて、それを成果にしていく会計はそのための材料であり、その形で徐々に積み上げていくように授業を進めています。

立命館アジア太平洋大学 国際経営学部

梁 晸宇ヤン ジョンウ 先生 インタビュー

※第1部は

教育情報メディア ACTIVE! に掲載しています。

インタビューに

ご協力いただいた

大学のご紹介

立命館アジア太平洋大学
874-8577 大分県別府市十文字原1-1

世界100カ国以上から集まる学生が共に学び、約半数が国際学生という多文化共生を体験できる場です。英語と日本語で学ぶ環境が整い、語学力と国際的視野が自然と広がります。企業連携やインターンシップも充実し、実践的な経験が積めます。少人数制の授業でディスカッションやフィールドスタディを通じ、問題解決能力を養うことができます。国際的な環境で成長したい方や、世界に羽ばたく力を子どもに持たせたい保護者に最適な大学です。