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グレーヴァ先生よくそう聞かれますが、実は高校数学と経済学で使う数学はかなり違います。私自身も高校時代は数学が本当に苦手で、ある有名な東大の先生も同じように高校数学が苦手だったとおっしゃっていました。高校数学は、あらゆる理系分野の基礎教育として設計されていて、とても難しく、積み重ね型なので一度つまずくと取り戻すのが難しい

でも、大学ではもう一度“ヨーイドン”で始められる数学があるのですよ!

グレーヴァ先生位相(いそう)数学」、英語では「トポロジー」と呼ばれる分野で、私自身もこれに救われたと思っています。中学や高校では教わらないけれど、経済学や他の理系分野でも使われる大事な数学です。

グレーヴァ先生まず、これは計算ではないのです。「距離とは何か」、「関数とは何か」といったような概念を言葉で定義する数学なのです。ですから言葉に強い人が得意になることも多くて、まさに私には合っていました。距離という言葉の定義さえきちんとすれば、そこからいろんな世界が描けます。
距離の定義を満たしていればどんな作り方でもいい、という柔軟な要素もあって、本当に面白いですよ。

トポロジーは、図形や空間を「切らずに曲げたり伸ばしたり」しても変わらない性質を研究する数学分野です。長さや角度ではなく、点のつながり方や穴の数など「構造」の本質に注目します。
たとえば、ドーナツとマグカップはどちらも穴が1つなので、トポロジーでは同じ形とみなされます。「つながり」や「連結性」「コンパクト性」といった性質を扱い、応用範囲も広い分野です。
幾何学や集合論から発展し、現代では様々な数学領域と近接しています。

グレーヴァ先生そうです。高校数学が苦手だったとしても、大学でこの位相数学を学べば、新たなスタートが切れますし、私のようなタイプでも研究者になれました。位相数学がなければ、研究者の道に進まなかったかもしれません。新しい言語を習うような感覚で取り組めます。半年くらい真面目に取り組めば、いろんな応用も見えてきますし、自分のなかで理解が深まる実感も湧いてきます。

私自身、今でも計算ミスをしますし、授業中に「そこマイナスです」と指摘されることもあります(笑)。スピードも遅いので、入試数学は苦労しました。でも、位相数学は基本的な概念をきちんと理解すればできるので自信につながりますよ。

グレーヴァ先生それは本当にもったいないと思います。大学で経済学部だった人たちでも、理論を深くやらなかった人たちは位相数学で逆転できるということを知らないでしょう。高校数学ではこの分野は教えないので、情報が伝わっていないのです。

中・高時代に数学でつまずいても、大学で再出発できます。