AI企業オルツが監理銘柄に…大半がウソの売上?
監理銘柄(審査中)の指定:(株)オルツ | 日本取引所グループ
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みなさんは、企業がなぜ上場を目指すのか考えたことがありますか?
2025年、AI議事録サービスで知られる株式会社オルツが、売上の水増しによる粉飾決算の疑いで東京証券取引所から「監理銘柄(審査中)」に指定されました。この出来事は、企業の信頼や情報公開の重要性、そして経済を支えるルールについて多くのことを教えてくれます。
企業の上場の目的や仕組み、オルツの不正内容、上場審査の流れなどを見てみましょう。
上場とは何か?
上場の定義と目的
上場とは、企業が自社の株式を証券取引所で公開し、誰でも売買できるようにすることです。主な目的は次のとおりです。
- 多くの投資家から資金を集めやすくなる
- 社会的信用や知名度が高まる
- 優秀な人材を集めやすくなる(株式をインセンティブとして活用)
- 経営の透明性が求められるようになる
ただし、上場企業は財務状況などを定期的に公開する責任も負います。
オルツの粉飾決算とは?
監理銘柄とは?
東京証券取引所は、企業の情報に重大な疑いがある場合、その企業を「監理銘柄(審査中)」に指定します。これは、上場廃止の可能性があるかを調査するための措置です。
不正の内容と手口
オルツは2021年から2024年にかけて、以下のような不正を行っていたとされています。
- 実際には使われていないAIサービスのアカウントを「契約中」として売上に計上
- 複数企業間で実体のない取引を繰り返す「循環取引」により売上を偽装
- 売掛金(まだ入金されていないお金)の金額が不自然に大きかった
この結果、2024年の売上約60億円のうち、7割にあたる約40億円が架空のものであった可能性が指摘されています。
急成長の数字の真実 ― 売上の推移と不正の期間
オルツの公式発表などによると、売上高は以下のように急増しています。
- 2020年:約5,500万円
- 2021年:約9億円
- 2022年:約26億円
- 2023年:約41億円
- 2024年:約60億円
ところが、第三者委員会による調査で2021年から2024年まで、毎年「売上高の大半」が過大計上されていたことが判明しました。特に2022年以降は売上全体の9割前後が「架空の売上」だった年もあったとされています。
年ごとの不正割合(第三者委員会報告より)
年度 | 会社発表売上高(億円) | 架空計上割合 | 架空計上額(億円) | 実際の売上推定(億円) |
---|---|---|---|---|
2021年 | 9.6 | 78% | 7.49 | 2.11 |
2022年 | 26.0 | 91% | 23.66 | 2.34 |
2023年 | 41.0 | 91% | 37.31 | 3.69 |
2024年 | 60.0 | 82% | 49.20 | 10.80 |
※2020年分については、主要な不正の対象外または金額が小さいという指摘が複数報道に見られますが、調査期間自体には2020年も含まれているため細部の検証が進められています。

上場審査とチェック体制
証券取引所の役割
証券取引所は、上場を希望する企業の経営状況や書類の内容を審査します。不正が発覚した場合は、監理銘柄に指定し、必要に応じて上場廃止を行います。
主幹事証券会社の責任
主幹事証券会社は、企業の上場準備をサポートする立場であり、財務や経営体制を審査します。不正を見逃すと、過去には損害賠償責任を問われた事例もあります。

関連ニュース
- 2025年4月、証券取引等監視委員会がオルツに対し、金融商品取引法違反の疑いで強制調査を実施
- 粉飾決算が発覚したことでオルツの株価は暴落し、投資家に損害が生じた
- 本件は、AIベンチャー企業に対する上場審査の在り方に大きな課題を投げかけました
まとめ
- 上場は資金調達や信頼向上を目指す企業にとって重要な手段
- オルツはAIサービスで急成長したが、売上の7割を水増ししていた疑いがある
- 実際の資金の動きと帳簿上の数字に差があり、不正が見抜けなかった
- 証券取引所や主幹事証券会社もチェックを行うが、全ての不正を防ぐのは難しい
- 不正発覚後は監理銘柄に指定され、場合によっては上場廃止もある
オルツの問題は、企業の信頼が社会や投資家にどれだけ影響を与えるかを示しています。みなさんが将来ビジネスや経済に関わるとき、コンプライアンス(ルールを守ること)の大切さを意識することが重要です。たとえば、株式投資をするときに企業の財務内容をしっかり見ること、ニュースの背景を調べることなど、小さな習慣が社会の仕組みを理解する力につながります。家族や友達と「正しい経営ってなに?」について話し合ってみましょう。