イラン情勢と飛行機代:国際線航空券の内訳と燃油サーチャージのしくみ
ANA・JAL、国際線の燃油サーチャージ6月引き上げ 日本発最大2倍 - 日本経済新聞
全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は6月発券分から、国際線の航空運賃に上乗せする燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を大幅に引き上げる。ホルムズ海峡の事実上の封鎖に伴う原油高を受けて、原油から精製されるジェット燃料の価格も高騰しており料金に反映する。燃油サーチャージは2カ月ごとにシンガポールケロシン価格の平均値を元に算出・改定される。日本発の場合、4〜5月発券分は欧州・北米行きで3万円前
中東情勢が緊張すると、ニュースでは原油価格の上昇がよく話題になります。では、その動きは私たちが買う国際線の航空券に、どのようにつながるのでしょうか。
実は、飛行機代は「運賃」だけで決まるわけではありません。燃油サーチャージ、空港使用料、税、手数料など、いくつもの項目が重なって総額になります。2026年春は、ホルムズ海峡をめぐる緊張や航空燃料価格の上昇を背景に、航空業界でも対応が続いています。
航空券の内訳を分けて見ると、「飛行機代が上がる」とは何が上がることなのかが見えやすくなります。
2025年12月1日〜2026年1月31日購入分のANA国際線では、日本―欧州・北米(ハワイ除く)片道の燃油サーチャージは27,500円でした。
では、2026年4〜5月発券分では、最も近い金額はどれでしょうか。
A. 9,400円
B. 31,900円
C. 55,000円
→正解は「B. 31,900円」です。
ANAの公式案内では、日本発の欧州・北米路線の片道燃油サーチャージは、2025年12月〜2026年1月の27,500円から、2026年4〜5月には31,900円となっています。
燃油サーチャージは、航空券の総額の中でも変動しやすい部分です。しかも見直しは一定期間ごとに行われるため、同じ路線でも買う時期によって負担が変わります。
中東情勢と航空燃料
ホルムズ海峡は、世界の石油輸送にとって重要な通り道です。IEAによると、2025年にはこの海峡を通ってほぼ日量2,000万バレルの石油が輸出されました。中東で緊張が高まると、この海峡を通る輸送の安全性やコストへの不安が強まり、原油市場が大きく動きやすくなります。
2026年春には、定期航空協会が「イラン中東情勢を背景にした航空燃料価格の高騰について」という緊急声明を出しました。そこでは、航空燃料価格がわずか1カ月で約2.5倍になったと説明されています。政府も緊急支援として航空機燃料を対象に含め、2026年4月2日以降は1リットルあたり19.9円の支給単価を示しています。
ここで大切なのは、原油価格の上昇がそのまま航空会社のコスト増につながり、その一部が燃油サーチャージとして航空券に反映されるという点です。つまり、イラン情勢は遠い地域のニュースに見えても、国際線の支払総額に影響しうる話なのです。
燃油サーチャージはどう決まる?
ANAの案内によれば、国際線の燃油サーチャージは、シンガポール市場のケロシン価格の2カ月平均を、同期間の為替レートで円換算し、基準テーブルに当てはめて決まります。つまり、原油だけでなく、航空燃料そのものの価格と円安・円高の両方が関係します。
2026年4〜5月購入分では、日本発の欧州・北米路線でANAは片道31,900円です。さらに、6〜7月購入分については、報道ベースでANAが55,000円、JALが50,000円へ引き上げる見通しも伝えられています。正式発表前の段階でも、燃料高の影響が次の改定に波及すると見られているわけです。
1枚の航空券を分解すると
例として、羽田からロンドンへの往復航空券を次のように分けてみます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 基本運賃 | 80,000円 |
| 燃油サーチャージ | 31,900円 |
| 羽田のPSFC | 2,950円 |
| 羽田のPSSC | 700円 |
| 海外空港税等 | 8,000円 |
| 発券手数料 | 2,000円 |
| 合計 | 125,550円 |
利用者から見ると「飛行機代が上がった」と感じても、どの項目がどれだけ動いたのかは見えにくいのです。特に今回は、運賃本体ではなく、まず燃料に関わる部分が注目されています。
タイトルにある「飛行機代」は、実際には1つの数字ではなく、いくつもの価格の集合だと考えると分かりやすくなります。

まとめ
- イラン情勢は原油や輸送不安を通じて市場に影響する
- ホルムズ海峡は世界の石油輸送で重要な場所
- 航空燃料価格は2026年春に急上昇した
- 政府は航空機燃料も支援対象にした
- 燃油サーチャージは航空券総額の一部
- 飛行機代は運賃だけで決まらない
ここまで見てきたように、1枚の航空券の値段は、「原油・ジェット燃料の国際市場」「イランやホルムズ海峡をめぐる地政学」「航空会社のレベニューマネジメント」「空港インフラと保安体制」「各国の税制」といった複数の因果から成り立っています。
遠い地域の情勢が、なぜ日本で買う航空券の値段に表れるのか。そんな視点でニュースを見ると、国際経済の仕組みがかなり立体的に見えてきます。


