ベンチャー企業のリアル!全樹脂電池で注目されたAPBが破産

次世代電池開発のAPBが破産、負債34億円=東京商工リサーチ | ロイター

東京商工リサーチによると、次世代型リチウムイオン電池「全樹脂電池」の開発・製造を手掛けていたAPB(福井県越前市)が23日、福井地裁から破産開始決定を受けた。負債総額は34億8500万円。

みなさんは「全樹脂電池」という新しい電池を知っていますか?これは従来のリチウムイオン電池よりも安全で、形も自由に作れる次世代の電池として注目されていました。
しかし、その開発を進めていたAPBという会社が2025年4月に破産してしまいました。なぜ期待されていた新しい電池の会社が倒産したのでしょうか?
全樹脂電池の特徴や開発の流れ、APBの経営体制の混乱、そして新しい技術開発の難しさについて考えてみましょう。

全樹脂電池とは?どんな技術だったのか

全樹脂電池は、電池の中の主要な部品を金属ではなく樹脂(プラスチック)で作った新しい電池です。これにより、発火や爆発のリスクが大幅に減り、安全性が高まりました。さらに、樹脂は形を自由に変えやすいため、電池の大きさや形を用途に合わせて設計できるという特徴もあります。
「バイポーラ構造」という特殊な仕組みを採用し、電気を効率よく流せる工夫も施されていました。この技術は、電気自動車や再生可能エネルギーの分野での活用が期待されていました。

APBの挑戦と開発の工夫

APBは2018年、日産自動車でバッテリー開発をしていた堀江英明氏によって設立されたベンチャー企業です。堀江氏は、より安全で高性能な電池を作るため、三洋化成工業やJFEケミカルなどの企業と連携し、全樹脂電池の開発を進めました。2021年には福井県越前市に工場を建設し、量産化にも挑戦しました。さらに、サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコとも共同開発を進め、世界展開も目指していました。

経営体制の混乱と資金難

しかし、全樹脂電池の量産化には想像以上に多くの資金と時間が必要でした。赤字が続き、資金繰りが厳しくなっていきます。
2024年には経営方針や代表者交代を巡って、経営陣と株主の間で対立が表面化しました。6月には堀江氏が社長を解任され、副社長が新社長に就任します。この経営権争いは、メインバンクや株主との信頼関係にも影響し、会社の意思決定を混乱させました。
新体制でも資金調達は進まず、補助金の返還や従業員への給与未払い、税金滞納など問題が深刻化しました。2025年2月には全従業員へのリストラ通告が行われ、4月には破産が決定されました。

ベンチャー企業の難しさと今後の展望

ベンチャー企業は、新しい技術を開発するために大量の資金を集め、研究や設備投資を行います。しかし、すぐに利益が出るわけではなく、長期間赤字が続くことも珍しくありません。資金が続かなくなると、せっかくの技術も商品化できず、会社が倒産してしまうこともあります。また、経営陣同士の意見の違いや株主との関係悪化も、大きなリスク要因となります。技術力だけでなく、経営力や資金調達力、チームワークも成功には欠かせないのです。

最近では、トヨタやパナソニックなど大企業も次世代電池の開発に力を入れており、電池技術の競争はますます激しくなっています。ベンチャー企業の失敗から学び、今後の成長に活かすことが大切です。

まとめ
  • 全樹脂電池は安全性と設計自由度の高い新しい電池
  • APBは多くの企業と連携し、全樹脂電池の量産化を目指した
  • 資金難と経営権争いが経営混乱を招いた
  • 資金調達の失敗が倒産の大きな原因
  • ベンチャー企業には技術だけでなく経営力とチームワークが不可欠

新しい技術やビジネスは、夢や希望を持って始まりますが、実現するまでには多くの困難があります。身近な便利なものがどのように作られ、どれだけの苦労があったのか、調べてみるのも面白いでしょう。
経済やビジネスの仕組みを知ることで、未来の社会を支える力が育ちます。