株価対策?それとも未来への投資?上場企業の暗号資産戦略

エス・サイエンス[5721]:新たな事業(暗号資産投資事業)の開始に関するお知らせ 2025年3月17日(適時開示) :日経会社情報DIGITAL:日本経済新聞

2025年3月17日 エス・サイエンス[5721]の開示資料「新たな事業(暗号資産投資事業)の開始に関するお知らせ」 が閲覧できます。資料はPDFでダウンロードできます

2025年3月17日、エス・サイエンス(証券コード:5721)が「暗号資産投資事業」を開始すると発表し、株価が時間外取引で急騰しました。

このところ、日本の株式市場では、業績が低迷する企業や株価が低い「低位株」企業が、次々と暗号資産事業に参入しています。メタプラネット、ネクソン、gumi、リミックスポイントなどの企業が、ビットコイン投資や暗号資産関連事業を開始しています。

なぜこれらの企業は暗号資産市場に注目しているのでしょうか?また、その戦略は本当に業績向上につながるのでしょうか?各社の本業の状況と暗号資産参入後の影響を詳しく見ていきます。

エス・サイエンス:業績低迷からの転換策

エス・サイエンスは、かつて「志村化工」として非鉄金属事業を展開していましたが、近年は学習塾や不動産事業など多角経営にシフトしています。しかし、2025年3月期の業績予想では、売上高6.1億円に対し、経常損失3.0億円、最終損失1.0億円と厳しい状況が続いています。

そんな中、同社は「暗号資産投資事業」への参入を発表し、その直後にPTS市場(夜間取引可能な市場)で株価が43円まで上昇しました。これは、通常取引での株価が30円前後であったことを考えると大きな上昇です。

みんかぶより
暗号資産事業に参入する企業の動向

メタプラネット:ビットコイン投資で急成長
メタプラネット(東証:3350)は、元々不動産や金融事業を手掛ける企業でしたが、業績が長年低迷していました。しかし、2024年にビットコイントレジャリー事業(ビットコインを保有・運用する事業)を開始し、株価が740%上昇しました。

現在、同社は約1,018ビットコインを保有し、その価値は約107億円に達しています。売上高は前年比306.0%増の10.62億円、営業利益は3.5億円を記録し、暗号資産投資が業績向上に大きく寄与したことが分かります。

みんかぶより

ネクソン:ゲーム大手の暗号資産投資
オンラインゲーム大手のネクソン(東証:3659)は、2021年に1億ドル(約110億円)相当のビットコインを購入しました。同社の本業は堅調で、2024年第3四半期には過去最高の四半期売上高を記録し、営業利益も前年同期比11%増の515億円となりました。

本業が安定している企業が暗号資産を財務戦略の一環として活用する事例として、ネクソンの動きは注目に値します。

ギグワークス:IT派遣から暗号資産へ
ギグワークス(東証:2375)は、ITエンジニア派遣やシステム開発を手掛ける企業です。同社は「SNPIT」という独自の暗号資産トークンを開発し、2024年12月から取引所での取引を開始しました。
しかし、2025年10月期第1四半期の決算では、前年同期が99百万円の黒字だったのに対し、289百万円の赤字へと転落しています。株価は一時27%上昇しましたが、業績改善にはまだ時間がかかる可能性があります。

gumi:ビットコイン投資とブロックチェーン技術への挑戦
ゲーム開発会社のgumi(東証:3903)は、2025年2月に10億円相当のビットコイン購入を決定しました。しかし、同社の本業は厳しく、売上高は前年比14%減少し、過去3年間で33%の減少を記録しています。

それにもかかわらず、株価は30日間で37%、年間では36%上昇しており、投資家の期待が先行している状況です。

リミックスポイント:暗号資産事業で株価急騰
リミックスポイント(東証:3825)は、暗号資産取引所「ビットポイント」を子会社に持つ企業です。2024年に暗号資産事業を再強化し、ビットコインやイーサリアムなどの複数の暗号資産を保有しています。

業績は収益が前年比21%減少していますが、株価は過去1ヶ月で45%、過去1年では162%も上昇しています。このように、暗号資産事業への期待が株価を押し上げる要因となっています。

企業が暗号資産事業に参入する主な理由

企業が暗号資産事業に参入する背景には、いくつかの要因があります。

  1. 株価上昇効果:暗号資産事業参入の発表だけで株価が急騰するケースがある。
  2. 新たな収益源の確保:業績不振の企業にとって、暗号資産市場は成長の可能性がある分野。
  3. デジタル資産への関心の高まり:企業がブロックチェーン技術やデジタル通貨に対応するため。
  4. 政策的な後押し:トランプ政権の暗号資産推進姿勢など、国際的な動きの影響。
日本における暗号資産規制の動向

一方、日本では暗号資産取引に対する規制強化の動きもあります。政府は暗号資産を株式のような金融商品として分類し、発行者に対する監視を強化することを検討しています。

日本国内の暗号資産取引口座数は2024年12月末時点で1,181万口座、預金残高は約4.5兆円(301億ドル)に達しており、市場の拡大とともに規制の必要性も高まっています。

まとめ
  • 業績不振企業や低位株企業が暗号資産事業に参入するケースが増加中
  • メタプラネットはビットコイン投資により業績が改善し、株価が740%上昇
  • ネクソンは本業が好調な中、110億円の暗号資産投資を実施
  • gumiやリミックスポイントは収益減少にも関わらず、株価は上昇傾向
  • 暗号資産規制の強化が今後の企業戦略に影響を与える可能性

企業の暗号資産市場への参入は、財務戦略の一環として今後さらに拡大する可能性があります。しかし、暗号資産市場は価格変動が大きく、短期的な株価上昇を狙う戦略が長期的な成功につながるかどうかは未知数です。

投資家は企業の本業と暗号資産事業のバランスを見極めることが重要です。例えば、メタプラネットのように明確な戦略を持ってビットコインを活用する企業と、単に株価対策として参入する企業では、その価値が大きく異なります。

皆さんが将来の投資を考える際には、「この企業は暗号資産を活用して本当に価値を生み出しているのか?」という視点を持つことが重要です。これからの経済の仕組みを考えるきっかけとして、暗号資産の動向に注目してみてはいかがでしょうか?

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