値段が高いのに儲からない?出前館が7期連続赤字!

出前館【2484】、今期経常を一転赤字に下方修正 | 決算速報 - 株探ニュース

 出前館 <2484> [東証S] が7月15日大引け後(15:30)に決算を発表。25年8月期第3四半期累計(24年9月-25年5月)の連結経常損益は31億円の赤字(前年同期は50.5億円の赤字)に赤字幅が縮小した・・・。

スマホ一つで美味しいごはんが届く「出前館」。多くの人が利用する便利なサービスですが、実は7期連続で赤字(利益が出ていない状態)となりました。
お店で食べるより少し値段が高いのに、どうして利益が出ないのでしょうか?そして、赤字が続いているのに、なぜ会社は大丈夫なのでしょうか?

そんな出前館のニュースをきっかけに、デリバリー業界が抱える課題やビジネスを考えてみましょう。

出前館に何が起きた?7期連続の赤字とは

出前館は2025年7月15日、今年度の業績が黒字になるという予想を修正しました。一転して、約49億円の赤字になる見込みだと発表したのです。これにより、出前館は7年続けて赤字になることが確実になりました。
多くの人が利用する人気のデリバリーサービスですが、会社としては厳しい状況が続いています。一体、会社の裏側で何が起きているのでしょうか。このニュースは、私たちの生活に身近なビジネスの難しさを示しています。

出前館 2025年8月期 第3四半期 決算説明会資料より
値段は高いのに…出前館が赤字になる3つの理由

「デリバリーは少し高いのに、なぜ赤字なの?」と不思議に思うかもしれません。その理由は、売上以上にお金がかかっているからです。主な理由を3つ見ていきましょう。

理由1:激しい「お客さん獲得競争」
フードデリバリー業界には、「Uber Eats(ウーバーイーツ)」など強力なライバルがたくさんいます。そのため、出前館は利用者を増やすために、テレビCMなどの広告や「送料無料」「半額クーポン」といった割引に大きなお金を使っています。
この宣伝や割引にかかる費用が、会社の利益を圧迫する大きな原因の一つです。多くのデリバリー会社が、この厳しい競争を勝ち抜くために赤字を覚悟で投資しています。

理由2:デリバリー特有の「高いコスト」
デリバリーサービスは、注文を受けるたびにお金がかかるビジネスモデルです。
例えば、料理を運ぶ配達員への報酬や、自社で運ぶ場合はバイクのガソリン代が必要です。また、私たちが使う便利なアプリを開発したり、安全に運営し続けたりするためにも多額の費用がかかります。このように、一つひとつの注文を届ける裏側には、私たちが思う以上のコストが存在するのです。

理由3:社会の変化と「節約ムード」
新型コロナウイルスの流行が落ち着き、外で食事をする人が増えました。その結果、デリバリーの需要はピーク時に比べて少し落ち着いています。
さらに、最近の物価上昇を受けて、多くの家庭が食費を節約しようと考えています。そのため、家で料理を作る機会が増え、デリバリーの利用を控える動きも出てきました。
こうした社会の変化も、出前館の売上に影響を与えています。

赤字でも会社が大丈夫なのはなぜ?

7年間も赤字が続いていると聞くと、「会社は倒産しないの?」と心配になりますよね。しかし、出前館が今すぐ経営難に陥る可能性は低いと考えられます。その背景には、強力なサポーターの存在があります。

親会社の強力なサポート
出前館の筆頭株主は、メッセージアプリで有名な「LINEヤフー」です。さらに、その親会社である韓国の大手IT企業「NAVER(ネイバー)」も出前館を支えています。このように、資金が豊富な巨大企業が親会社としてバックについているため、赤字が続いても事業を続けるためのお金を支援してもらえるのです。これは会社にとって大きな安心材料となります。

将来のための「先行投資」という考え方
現在の赤字は、将来大きな利益を生むための「先行投資」という側面もあります。今は赤字を出してでも、広告や割引でお客さんを増やし、業界でのシェア(市場での占有率)No.1を目指しているのです。
これは、いずれライバルが減ったときに市場を独占し、安定して利益を出せる会社になるための戦略と言えるでしょう。つまり、今の赤字は未来への「種まき」なのです。

デリバリー業界全体の動き

実は、このような厳しい状況は出前館だけの話ではありません。デリバリー業界全体が大きな変化の時期を迎えています。
過去には、LINE社が運営していた「LINEデリマ」がサービスを終了するなど、競争の激化によって市場から撤退する企業も出ています。生き残りをかけて、各社はAIを使った効率的な配達ルートの計算や、他社にはないユニークなサービスで差別化を図ろうと必死です。

まとめ
  • 出前館は2025年度も赤字の見込みで、7期連続の赤字が確実
  • 赤字の主な理由は「激しい競争」「高い配達コスト」「社会の変化」の3つ
  • 赤字でも会社が大丈夫なのは、親会社である「LINEヤフー」などの強力な支援があるから
  • 現在の赤字は、将来の利益のための「先行投資」という戦略的な意味合いを持つ

私たちが普段何気なく使っているサービスも、その裏側では激しいビジネス競争が繰り広げられています。今回の出前館のニュースは、会社の利益の仕組みや、経済の動きを考える良いきっかけになります。
「このお店はどうやって利益を出しているんだろう?」「このサービスはなぜ無料なんだろう?」と、身の回りのビジネスに疑問を持つことが、経済を学ぶ第一歩です。出前館が今後、どのようにして黒字化を目指していくのか、その戦略に注目してみると、さらに面白い発見があるかもしれませんね。