ドローンで荷物はどう届く?日本郵便の実証実験

年賀状などの手紙は減少する一方、ネット通販の拡大により荷物の数は増え続けています。こうした変化の中で、日本郵便はドローンを使った荷物配送の実用化に取り組んでいます。
2022年12月には、人が住む地域の上空を目で見えない範囲まで飛ばせる「レベル4飛行」が解禁され、ドローン物流は新しい段階に入りました。山間部や離島など、人手が不足しやすい地域で機械が配達を担うと、私たちの暮らしや仕事はどう変わるのでしょうか。

配達方法の変化は、雇用やコスト、地域格差といった経済の仕組みとも深く関わっています。日本郵便のドローン配送や、ドローン物流の現状を見てみましょう。

まずはクイズで考えてみよう(正解は問題をクリック)

Q. 日本郵便がドローンで運べる荷物の重さとして、公表・報道されている内容に最も近いものはどれでしょうか。

A. 約1kgまで
B. 約5kgまで
C. 約20kgまで

→正解は「B. 約5kgまで」です。
日本郵便は実証実験において、数kgの荷物を十数km以上運べるドローンを使用しています。詳細な距離や条件は地域ごとに異なりますが、「人が運ぶと時間がかかる地域に、数kgの荷物をまとめて届ける」という方向で検証が進められています。

ドローンとレベル4飛行の基礎知識

ドローンは、正式には「無人航空機」と呼ばれ、人が乗らずに遠隔操作や自動操縦で飛行する機械です。撮影や農業、点検作業などに加え、物流分野でも活用が進んでいます。日本では、ドローンの飛行方法は安全性の観点から「飛行レベル」で分類されています。

  • レベル1:目で見える範囲で人が操縦
  • レベル2:目で見える範囲で自動・自律飛行
  • レベル3:人が住んでいない場所で目視外飛行
  • レベル4:人が住む地域の上空で目視外飛行

2022年12月にレベル4飛行が解禁されたことで、条件を満たせば市街地上空でもドローンが自動飛行し、荷物を運べるようになりました。

日本郵便のドローン配達はどこまで進んでいるか

日本郵便は2018年以降、福島県や東京都奥多摩町などでドローン配送の実証実験を重ねてきました。山間部では、道路状況や人手不足により配達に時間がかかるケースが多く、ドローンの有効性が検証されています。
2023年には奥多摩町で、郵便局から個人宅付近まで第三者上空を通る形の試験飛行が報じられました。この試験では、ドローンは自動で飛行し、操縦者は画面でルートを監視する方式が取られています。

物流の課題とドローンが果たす役割

物流分野では、ネット通販の拡大により荷物量が増える一方、配達を担う人材は高齢化や人口減少で不足しています。さらに、燃料費や人件費の上昇がコストを押し上げています。ドローン配送は、こうした課題に対する一つの手段として注目されています。

特に効果が期待されているのは、山間部や離島、災害時など、従来の輸送手段では時間やコストがかかる場面です。ドローンを使えば、移動時間の短縮や燃料使用量の削減が可能となり、長期的には輸送コストの抑制につながる可能性があります。これは、料金設定やサービス維持といった経済の仕組みにも影響します。

なぜすぐに広がらないのか

なぜ、レベル4飛行が解禁されたにもかかわらず、街中でドローン配達が当たり前になっていないのでしょうか。結論から言うと、安全を確保するために厳しい制度や認証が必要だからです。

レベル4飛行を行うには、国が認証した機体の使用や、技能証明を持つ操縦者の関与、飛行計画の通報と記録、事故時の報告体制などが求められます。これらの条件を満たすには時間とコストがかかるため、実用化は段階的に進められています。

ドローン配達がもたらす変化

ドローン配送が広がることで、過疎地でも安定した物流を維持しやすくなる可能性があります。また、配達員の負担軽減や、災害時の代替輸送手段の確保にもつながります。国土交通省では、ドローンと配送ロボットを組み合わせた実験も紹介されており、「人が行きにくい場所に機械で届ける」新しい物流モデルが検討されています。

まとめ
  • ドローンは無人航空機で、飛行方法はレベル1から4に分類される
  • 2022年12月にレベル4飛行が解禁された
  • 日本郵便は2018年以降、山間部を中心に実証実験を重ねている
  • 人手不足やコスト増を背景に、ドローン物流が注目されている
  • 厳しい安全ルールの下で、段階的に実用化が進んでいる

ドローン配達は、技術だけでなく、法律や費用、地域社会との調整が欠かせない分野です。ニュースの見出しだけでなく、公的資料や企業発表を確認すると、数字や具体例が見えてきます。ドローン物流が価格や雇用、地域格差にどのような影響を与えるのか、自分なりの視点で考えてみてください。