F1はなぜ“超高額”放映権ビジネスに?フジテレビが日本放映権独占
2026年、日本のF1視聴環境が大きく変わります。フジテレビは2026〜2030年の5年間、日本国内のF1「独占放送・配信権」を取得しました。これにより、長年続いたフジテレビとDAZNの並行体制は終了し、テレビも配信もフジテレビ系に一本化されます。
これはF1中継40年の節目に行われた大きな決断であり、日本のスポーツメディア市場にとっても転換点となります。
世界に目を向けると、F1の放映権料は年間約11.8億ドル(約1,888億円・1ドル160円換算)に達し、主要スポーツの中でも最大級の規模です。メディア企業やIT大手が高額契約を結ぶのはなぜなのか。放映権がビジネスとしてどのように価値を持つのか。
フジテレビの独占契約と世界の動きを手がかりに、F1ビジネスの仕組みを整理します。
日本のF1中継が一本化される意味
フジテレビは長年F1中継を担ってきましたが、2016年以降はDAZNが参入し、日本では「テレビはフジテレビ」「ネットはDAZN」という二本立ての視聴構造が続いてきました。2025年シーズンをもってDAZNはF1配信を終了し、2026年からはフジテレビのFOD、CS放送「フジテレビNEXT」で全24戦がライブ配信されます。
さらにF1公式配信サービス「F1 TV」もFODと連携し、日本国内で利用可能になる見通しです。複数の車載カメラや無線音声など、より高度なデータ視聴ができるようになり、ファンの体験は大きく広がります。
放送局にとって独占権は、視聴者の囲い込みと自社サービスの成長を同時に実現する強力な資産です。一方、視聴者側は加入サービスを見直す必要が出るなど、実生活での影響を受けることになります。
世界で高騰するF1放映権──IT企業が参入する理由
F1の放映権は世界的に加熱しています。リバティ・メディアが公表したデータによれば、F1のメディア権収入は2017年の約6.06億ドル(約970億円)から2024年には約11.8億ドルへと増加し、収入源の中で最大の柱となっています。
関連ニュースでは、2025年10月にIT大手Appleが米国における2026年からのF1独占放映権を獲得したと報じられています。総額約7億ドル(約1,120億円)(5年間)とされ、年間約約1.4億ドル(約224億円)規模の契約です。従来の放送局ESPNの支払額を大きく上回り、資金力のあるテック企業がスポーツを「戦略的コンテンツ」として扱っていることが示されています。
NetflixもF1ドキュメンタリー『Formula 1: 栄光のグランプリ(Drive to Survive)』をヒットさせ、放映権獲得を検討したとされています。歴史ある放送局だけでなく、動画配信企業やテクノロジー企業がスポーツの価値を再定義し、競争を激化させています。
なぜ放映権はここまで高くなるのか
放映権高騰の背景には、いくつかの明確な経済的理由があります。
1. 圧倒的な「集客力」と「希少性」
F1は年間24戦が世界各地で開催され、世界中で数億人が視聴します。広告主にとって信頼できる集客力を持つスポーツコンテンツは貴重で、放送局は高額でも権利を得る価値があります。
2. F1ビジネスを支える主要な収入源
F1の収益は「放映権料」「スポンサー収入」「開催料」の三つが中心で、放映権はその約3分の1を占めます。
2023年には10チームへの分配金が約12億ドル(約1,920億円)に達しました。競技の質を維持するためには継続的な投資が必要であり、その源泉が放映権料です。
3. テック企業参入による市場価格の上昇
資金力のあるIT企業がスポーツ放映権に参入したことで、価格競争が激しくなり、各国で契約額が上昇しています。米国でAppleが契約を勝ち取った事例はその象徴です。
日本向けの契約額は非公開ですが、世界的な放映権市場の上昇を踏まえると、フジテレビも大規模な投資を行ったことが推測されます。今後どのようにFODなどの会員拡大を図るのか、企業戦略としても注目されます。

まとめ
- フジテレビが2026〜2030年のF1日本独占放映権を取得
- DAZNでの配信は終了し、FODとCS放送に一本化
- F1の放映権収入は世界で年間約11億8,000万ドル規模へ拡大
- 米国ではAppleが独占契約を獲得し、競争が激化
- 放映権料はチーム運営と技術開発を支える重要な財源
- 独占は企業にとって有利だが、視聴者には選択肢の変化をもたらす
私たちがスマートフォンやテレビで見るスポーツ中継の裏側では、数千億円規模のお金が動き、世界中の企業が競争しています。視聴料や広告費はそのままスポーツの運営資金となり、競技の質やサービス向上につながっています。
F1は今、「見る」から「体験する」コンテンツへと変化しつつあります。車載映像、リアルタイムデータ、コース戦略の解析など、観戦のスタイルはさらに進化していきます。一方で、独占契約が増えることで価格や視聴方法が限定される側面もあります。
あなたは、好きなスポーツをどのような形で楽しみたいですか。視聴方法や支払い方を考えることは、スポーツビジネスの理解につながる第一歩です。

