グリコ「ポッキー」自主回収:安全性と特別損失20億円

江崎グリコが「ポッキー」など600万個を自主回収 チョコレート原料のカカオ豆に香辛料の香り 風味変わるも安全性問題なし|FNNプライムオンライン

江崎グリコはチョコレート製品20品目、合わせて約600万個を自主回収すると発表しました。自主回収するのは、「ポッキーチョコレート」「ポッキー極細」などチョコレート製品20品目・約600万個で、賞味期限が2026年5月から10月までと記載された商品です。全国のスーパー、コンビニ、通販サイトなどで販売されました。対象の商品は原料のカカオ豆を倉庫の改修工事の際、一時的に香辛料と同じ場所で保管したため、香辛料の香りが移ったということです。本来の風味と異なりますが、そのまま食べても安全性に問題はないとし…

食品メーカーの不祥事やリコールのニュースを聞くと、「食べても安全なのに、なぜ回収するのだろう」「企業の業績や株価にどれほど影響するのだろう」と疑問に思う人も多いはずです。2025年12月、江崎グリコは主力商品の「ポッキー」などチョコレート製品の一部を自主回収し、あわせて通期業績予想の下方修正を発表しました。この出来事は、品質管理と企業経営、そして株式市場の関係を考えるうえで、とても分かりやすい事例です。

本記事では、何が起きたのかを事実ベースで整理しながら、「品質」「お金」「株価」がどのようにつながっているのかを、中高生にも理解できる言葉で解説します。ニュースを読む力を一段深める視点を一緒に確認していきましょう。

まずはクイズで考えてみよう
(正解は問題をクリック)

  • A. 約60万個
  • B. 約600万個
  • C. 約6,000万個

正解は「B. 約600万個」です。

江崎グリコの発表によると、回収対象はチョコレート製品20品目、合計約600万個です。
原因は、倉庫改修工事の際にカカオ豆と香辛料を同じ場所に保管したことで、香辛料の香りがカカオ豆に移ったことと説明されています。安全性に問題はないものの、本来の風味と異なるため、自主回収を決めたとされています。

何が起きたのか:ポッキーの自主回収

江崎グリコは2025年12月、「ポッキーチョコレート」や「ポッキー極細」など、チョコレート製品20品目で本来と異なる風味の商品が流通している可能性があると公表しました。原因は、主原料であるカカオ豆の保管環境にありました。倉庫の改修工事中、一時的に香辛料と同じ場所で保管した結果、香りが移ったとされています。

同社は「食べても健康被害はない」と説明しています。それでも市場に出回った商品をそのままにせず、自主回収を決定しました。購入者に対しては、問い合わせ窓口を通じて回収や返金などの対応を行うことも案内されています。

この対応から分かるのは、食品メーカーにとって「安全であること」だけでなく、「表示どおりの品質であること」も重要な約束だという点です。

なぜ「安全」でも回収するのか

日本の食品リコール制度では、健康被害の恐れがある場合だけでなく、品質や表示が基準と異なる場合も回収の対象になります。たとえ体に害がなくても、風味や香りが本来のものと違えば、「商品としての約束を守れていない」と判断されることがあります。

実際、江崎グリコは今回とは別に、飲料「アーモンド効果 3種のナッツ 200ml」でも、風味劣化の可能性を理由に自主回収を行っています。また、消費者庁のリコール情報を見ると、2022年以降も「風味や変色」「表示ミス」を理由とした自主回収は毎年報告されています。
こうした事例は、品質管理が企業の信頼と直結していることを示しています。

業績予想はどう変わったか

今回の自主回収を受け、江崎グリコは2025年12月期の通期連結業績予想を下方修正しました。修正後の予想では、売上高は3,620億円、営業利益は100億円、親会社株主に帰属する当期純利益は55億円とされています。1株当たり当期純利益は86.39円です。

この修正には、チョコレート製品の自主回収に伴う約20億円の特別損失が含まれています。特別損失とは、通常の事業活動とは別に、一時的に発生した大きな費用をまとめて計上する項目です。回収や廃棄、検査、返金対応などにかかる費用が、ここに含まれます。

回収対応には多額のコストがかかり、それが会計上の費用として利益を押し下げるからです。

企業の決算資料や過去の開示事例(2023〜2025年)を見ると、自主回収に伴う費用や廃棄損は「特別損失」として計上されるケースが多く確認されています。売上の減少や返品対応も重なることで、最終的な純利益が下がる構造になっています。

株価はどう反応したか

業績予想の下方修正と聞くと、「株価は大きく下がる」と考えがちです。しかし、江崎グリコの場合、発表後の株価の反応は比較的落ち着いていました。市場報道(2025年12月)によると、発表翌日の株価は前日比で小幅高、いわゆる「小じっかり」の動きだったとされています。

その理由として、「業績の悪化はある程度予想されており、悪材料が出尽くした」と市場が受け止めた可能性が指摘されています。株価は、ニュースそのものだけでなく、「市場がどこまで織り込んでいたか」によって動きが変わることを示す例です。

まとめ
  • ポッキーなどチョコレート製品20品目が自主回収対象
  • 回収数は約600万個
  • 原因はカカオ豆と香辛料の保管環境
  • 安全性に問題はないが品質方針に基づき回収
  • 回収関連費用として約20億円を特別損失に計上
  • 業績予想は下方修正されたが株価の反応は限定的

今回の事例は、「品質の問題」が企業のお金の動きや株価にどう影響するのかを、一連の流れで学べるニュースです。ほかの食品メーカーや飲料メーカーでも、リコールが発表されたあとに業績や株価がどう動いたかを比べてみると、企業ごとの対応の違いや市場の見方が見えてきます。

また、決算記事を読む際に、「売上高」「営業利益」「当期純利益」「特別損失」が、それぞれどんな出来事と結びついているのかを意識してみてください。そうすることで、ニュースが単なる出来事ではなく、社会や経済の仕組みとして理解できるようになります。品質と信頼、コストと利益のバランスを、別のニュースでも探してみてはいかがでしょうか。