2025年「今年の漢字」は熊
「今年の漢字®」|公益財団法人 日本漢字能力検定協会
「今年の漢字®」は一年の世相を表す漢字一字を全国から募集し、上位20位までを発表しています。2025年「今年の漢字®」は2025年12月9日(火)までWeb応募を行いました。2025年12月12日(金)に結果を発表します。
2025年の「今年の漢字」は「熊」でした。
全国各地で熊の目撃・被害が相次ぎ、社会全体が人と自然の距離感を再考する一年でした。清水寺での発表(12月12日、日本漢字能力検定協会)によれば、全国から寄せられた約18万9千票のうち、「熊」が2万3,000票以上を集めて1位に。2位は「米」(アメリカやコメ価格上昇などを象徴)、3位は「高」(物価や気温の「高」を反映)でした。
今年の漢字の仕組みと発表日
「今年の漢字」は、公益財団法人日本漢字能力検定協会が1995年から行っている企画です。全国の人々からはがきやインターネットで「今年を表す漢字一字」を募集し、最も応募数の多かった漢字がその年の「今年の漢字」として選ばれます。発表は毎年12月12日に京都市東山区の清水寺で行われ、清水寺の貫主が大きな和紙にその年の漢字を揮毫します。
12月12日は、日本漢字能力検定協会が定めた「漢字の日」です。「12月12日=いい字一字」という語呂合わせが由来で、「この日に少なくとも良い漢字を一字覚えてほしい」という趣旨が示されています。年末に近いこの時期に発表されることで、「一年を振り返る行事」としてメディアや学校で取り上げられやすくなっています。
1位「熊」 出没被害と生活・地域経済
2025年の1位「熊」は、発表30回の歴史で初めて選ばれた漢字です。全国各地で熊の目撃や人的被害が過去最多規模で報告され、市街地への出没や農作物被害が大きなニュースになりました。近畿地方でもけが人が出ており、自治体が相次いで注意喚起を行いました。
発表した日本漢字能力検定協会は、熊の出没が「生活や経済活動に深刻な影響を及ぼした」点や、人と自然との共存を考えるきっかけになったことを選定理由として挙げています。さらに、クマ科に分類されるパンダ(熊猫)が中国へ返還されたことも「熊」を印象づける出来事として紹介されています。こうした事実の積み重ねが、「熊」を2025年の象徴的な一字としました。

今年の漢字 ウェブサイトより
2位「米」 コメとアメリカに向いた視線
2位の「米」は23,166票で、「熊」とはわずか180票差でした。日本漢字能力検定協会は、コメ不足や価格の上昇、備蓄米や古古古米の放出など、「お米」をめぐるニュースが多かったことを理由に挙げています。天候不順や生産コストの上昇などを背景に、主食であるコメの価格が上がり、スーパーの売り場や家庭の食卓に直接影響しました。
同時に、「米」はアメリカ(米国)を意味する漢字でもあります。2025年はアメリカの政権運営や通商政策が国際ニュースの中心となり、日本経済への影響もたびたび報じられました。このため、「お米」と「アメリカ」という二つの意味を重ねて「米」を選んだ人が多かったと紹介されています。
3位「高」 物価高・株高・金利など“あらゆる高さ”
3位の「高」は18,300票でした。家計を直撃する物価高、日経平均株価の高値更新、防衛費や電気料金の高止まりなど、さまざまな「高」が重なった年を表しています。消費者物価指数では、食料品やエネルギー価格の上昇が続き、「値上げ」が日常的なニュースになりました。
一方で、日本株は企業業績の改善や円安の影響を受けて高水準で推移し、「株高」が話題になりました。金融面では、日本銀行がマイナス金利政策を終了し、金利が正常化の方向へ動き始めたことも、将来に向けた「金利が高くなる方向性」として注目されました。
4位・5位と大阪・関西万博
4位の「脈」と5位の「万」は、ともに大阪・関西万博と結びつけて解説されています。4位「脈」は、万博の公式キャラクター「ミャクミャク」に由来する票が多く、血の流れや歴史・文化の“つながり(脈)”をイメージしたキャラクターが2025年に広く知られるようになったことが理由として挙げられました。
5位の「万」は、「万博」(万国博覧会)そのものを表す漢字です。大阪・関西万博は、会場整備、交通インフラ、宿泊需要などを通じて経済効果が期待される大型イベントであり、2025年は「万博イヤー」として各種ニュースが増えました。
「万」はまた、大きな数字を表す漢字でもあり、国家予算や物価、株価など、万や億の単位の数字が頻繁に報じられたことも連想させる1字になっています。

公益財団法人日本漢字能力検定協会
2025年「今年の漢字」より
ぜひ「今年の漢字」ウェブサイトで、選ばれた理由やそれぞれの漢字の意味を確認してみてください。
おまけ:社会経済探究講座CA$H!受講生の予想
筆者が講師を務める社会経済探究講座CA$H!では、「今年の漢字」発表前に1年の出来事を振り返り、生徒一人ひとりに今年の漢字を予想してもらいました。
「政」「米」「谷」「働」「新」「希」「規」「工」「少」「新」「国」「戦」「高」などが予想されました。
講師である筆者も、「高市総理大臣の『高』」「米や物価の『高』さ」「日経平均株価の『高』値更新」などを理由に、「高」を今年の一字として予想しました。
社会の出来事やお金の仕組みをテーマに学ぶ講座ということもあってか、、物価・景気・政治・人口・労働など、ニュースの“裏にある仕組み”を意識した漢字が多い印象です。 特に「米」「高」は複数の生徒が選んでおり、食料問題や物価高が身近なテーマとして捉えられていたことが分かります。
まとめ
- 今年の漢字は、日本漢字能力検定協会が全国公募で選び、12月12日の「漢字の日」に清水寺で発表される
- 2025年の1位は「熊」で、熊の出没・被害と人と自然の共存への関心が背景にある
- 2位「米」と3位「高」は、コメ不足や物価高、株高など、家計と市場の動きを表している
- 4位「脈」と5位「万」は、大阪・関西万博とその経済・文化的な影響と結びついている
「熊」「米」「高」「脈」「万」を見比べると、自然、食料、物価、イベント、国際関係など、生活のいろいろな面で“揺れた一年”だったことが分かります。
自分や家族にとって「一番影響を感じた」のは、どの漢字に近いテーマでしょうか。
たとえば、家計では「米」や「高」、将来の仕事や産業では「万」や「脈」、安全や地域社会では「熊」が関係してきます。
ニュースを「ただの話題」で終わらせず、「この漢字は、どんなお金の動きや仕事、暮らしの変化につながっているのか?」と考えながら見てみると、経済の勉強にも大きなヒントになります。

