カカオ危機に明治チョコレートが挑む:価格高騰への答え

明治チョコレート、カカオ高で決めた「究極の選択」 味と手頃な価格を両立することができるか? | 食品 | 東洋経済オンライン

国内菓子最大手・明治のチョコレート製品が、大転換期を迎えている。2024年10月、明治は看板商品「明治ミルクチョコレート」や「きのこの山」「たけのこの里」などチョコ製品98品を平均で約20%値上げした。さらに…

明治の人気チョコレート商品が、大きな転換期を迎えています。カカオの価格高騰により、商品の規格や成分が変更されるという“究極の選択”を余儀なくされました。

この背景には何があるのでしょうか?私たちにとっての影響や、明治の戦略について考えてみましょう。価格と品質の両立を目指す明治の挑戦を見てみましょう。

カカオ価格高騰が生んだ決断

カカオ価格の上昇とは?
カカオ豆はチョコレートの主な材料ですが、ここ数年で価格が急上昇しています。2024年3月末には、ニューヨーク市場でカカオ豆の先物価格が1トンあたり1万ドルを突破し、過去最高値を更新しました。この価格上昇の背景には以下の要因があります:

  • 気候変動の影響: 西アフリカの主要生産地であるコートジボワールやガーナでは、干ばつや異常気象が続き、収穫量が大幅に減少しています。
  • 病害虫の増加: 異常気象に伴い、新たな病害虫が発生し、カカオの木が被害を受けています。
  • 生産コストの上昇: 労働力不足や燃料費の高騰も、生産コストを押し上げる一因となっています。

これらの要因が重なり、カカオの供給が不安定になり、価格が高騰しているのです。

チョコレート消費が多い国と日本の順位

チョコレートの消費量が多い国トップ5と日本の順位を見てみましょう。
例えば、スイスやドイツなどのヨーロッパ諸国では、日常的にチョコレートを楽しむ文化が根付いています。一方、日本では、バレンタインデーやホワイトデーといったイベントに合わせて消費が増える傾向があります。また、和菓子などの多様な選択肢があるため、チョコレートが特定の場面で消費される特徴があります。

順位国名一人当たり消費量(kg)
1位スイス10.8
2位ドイツ9.9
3位オーストリア8.9
4位イギリス8.5
5位ベルギー8.3
18位日本4.6

スイスやドイツなどのヨーロッパ諸国がトップを占めている一方で、日本は18位に位置しています。
日本ではバレンタインデーなど特定のイベント時に消費が集中する傾向があり、和菓子など他の菓子文化も影響しています。

"準チョコレート"とは?

明治はココアバターの使用量を減らし、代わりにパーム油脂などの“代用脂”を使うことでコストを抑える方法を選びました。これにより、一部の商品が“準チョコレート”に変更されました。ただし、代用脂の使用は環境や健康への影響についての議論を呼ぶこともあります。

パーム油の生産は森林破壊や生物多様性の減少と関連しており、健康面では過剰な摂取がトランス脂肪酸に関する懸念を生む場合もあります。このような背景を考慮しつつ、消費者にとっての選択肢を広げる工夫が求められています。

チョコレート:ココアバターが多い、なめらかな口どけ

準チョコレート:代用脂を含む、価格が抑えられる

なぜこの選択が必要だったのか?
明治の川村社長は、「品質を保ちながら、手頃な価格を実現するため」と語っています。代用脂を活用することで、消費者が購入しやすい価格帯を維持し、ブランドへの信頼を損なわないよう工夫しています。

カカオとココアバターの違い

カカオとは?

  • 由来: カカオはカカオの木(カカオポッド)から採れる種子です。
  • 用途: カカオ豆は発酵、乾燥、焙煎されてチョコレートやココアの原料となります。
  • 成分: カカオ豆には固形成分(カカオマス)と脂肪分(ココアバター)が含まれています。

ココアバターとは?

  • 由来: カカオ豆から脂肪分を圧搾して抽出した天然の植物油脂です。
  • 特徴: 常温では固体で、体温で溶ける性質があり、なめらかな口どけを生み出します。
  • 用途: チョコレート作りにおいて、香りや舌触りの良さを与える重要な成分です。また、化粧品や薬品にも使われています。

主な違い

項目カカオココアバター
形状種子やペースト状固体の油脂
含有成分カカオマス(固形分)とココアバター(脂肪分)カカオ豆から抽出した油脂
用途チョコレートやココアの原料チョコレートの滑らかな舌触りを実現
抽出方法発酵、乾燥、焙煎カカオ豆を圧搾して抽出
明治のプライドと葛藤

"本物"へのこだわり
明治は長年、ヨーロッパの“本物”チョコレート文化を日本に広める役割を担ってきました。
看板商品“明治ミルクチョコレート”は、代用脂を使わないピュアチョコレートとして、約100年間レシピを変えずに提供されています。他社製品と比較すると、代用脂を一切使用していないことが大きな特徴で、これがなめらかな口どけと深いコクを生み出しています。
また、厳選されたカカオ豆を使用し、製造過程でも高い品質管理を行うことで、競合との差別化を図っています。

消費者の声
規格変更に対しては賛否両論があります。一部では“品質が下がった”という意見もありますが、実際に味や食感の差はほとんど感じられないという報告もあります。

明治の今後の戦略

明治は今後、“本物志向”の商品と、“手頃な価格”を追求した商品を明確に分けたマーケティング戦略を取る方針です。高カカオ製品や“代用脂を使用しない”商品を訴求しつつ、消費者のニーズに柔軟に応えていく予定です。

  • カカオの生産地での気候変動問題: カカオ豆の供給不安の背景には、地球温暖化の影響も大きいとされています。
  • 他社の動き: 他のチョコレートメーカーも、同様に価格や成分の見直しを進めています。
まとめ
  • カカオ価格高騰で明治の“準チョコ”への転換を決めた
  • “準チョコ”はコストを抑えつつ、味や品質を維持する工夫がされている
  • “本物”志向の商品も引き続き提供
  • 明治は消費者のニーズに応じた柔軟な商品戦略を展開中

カカオ豆の供給不安の背景には、地球温暖化の影響も大きいとされています。また、他のチョコレートメーカーも、同様に価格や成分の見直しを進めています。

食品の価格や品質の裏には、多くの選択や工夫が隠れています。
例えば、皆さんの好きなお菓子が値上げされた場合、それがどのような背景で行われたのか調べてみるのはどうでしょうか?さらに、環境に優しい商品を選ぶことで、自分たちの行動がどのように未来に影響を与えるのか、家族や友人と意見を交換してみてください。

日常生活でできる小さな選択が、地球や社会に大きな変化をもたらすことを実感する機会になるかもしれません。

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