Reality Labs700億ドル赤字...MetaはメタバースからAIへ舵を切る
Meta(旧Facebook)がメタバース関連の支出を最大30%削減すると報じられた日、同社株価は一時4%上昇しました。
Reality Labs部門は2021年以降約700億ドルの損失を記録しており、VRユーザー数や収益とのギャップが課題として注目されました。一方でMetaは今後3年間で6000億ドルをAIインフラへ投じる計画を示し、生成AIやスマートグラスなど“現実世界で使うAI”への集中が鮮明です。
なぜFacebookはMetaへ社名を変え、メタバース投資を進め、その後AIへ比重を移したのでしょうか。企業の投資と経済の関係を見てみましょう。
FacebookはなぜMetaになったか
Facebookという社名はサービス名と同じであり、InstagramやWhatsApp、Oculusなど複数事業を抱える企業全体を指し示しにくくなっていました。2021年の公式発表では、社名変更は「メタバースを実現する企業としての方向性を示すため」と説明されています。Meta(メタ=超える)という語を採用した背景には、VR・AR・AIを組み合わせた仮想空間を長期的なプラットフォームにする意図が明確でした。
名称変更はブランド刷新であると同時に、投資家や社会に向けた長期戦略のシグナルでもありました。
メタバース投資はなぜ見直されたか
MetaはメタバースやVR・AR関連を担当する開発部門「Reality Labs(リアリティ・ラボ)」を通じて、VRヘッドセット「Meta Quest」や仮想空間「Horizon Worlds」を展開し、人間の視点で動けるVR体験と3D交流を推進してきました。Reality Labsは、VRヘッドセットや仮想空間サービスの企画・開発・研究をまとめて行う社内組織です。
しかし2021年以降のReality Labs損失は累計約700億ドル規模となり、利用者数や稼働時間とのバランスが課題として指摘されました。VRヘッドセットの重量や表示品質、酔いやすさなど、技術改善が必要な課題も残りました。
2025年12月にはメタバース関連支出を翌年最大30%削減する案が報じられ、その直後にMeta株価は一時4%上昇しました。市場は「赤字事業の縮小=資本配分の見直し」と受け取り、投資判断に反応したと言えます。
同テーマではウォルト・ディズニーが2023年にメタバース部門を廃止し、マイクロソフトもソーシャルVR「AltspaceVR」を終了しています。この動きは業界の撤退というより、短期収益とのバランスを考えた資本再配分の判断が行われた事例と整理できます。
一方で複数調査では2030〜2035年にかけてメタバース市場が数千億ドル〜数兆ドル規模へ成長すると予測されています。市場が大きくなっても、その成果を誰が取れるかは別の問題であり、投資判断の難しさを映しています。

MetaがAIに力を入れる理由
メタバース投資の見直しと同時に、MetaはAIシフトを加速させました。報道では今後3年間で6000億ドルをAIインフラ(データセンター・半導体調達など)に投じる計画が紹介されています。生成AI研究を行うMeta Superintelligence Labsでは、大規模モデル開発やAIチャット機能の強化が進行中です。
またRay-Ban MetaのようなAI搭載スマートグラスは、仮想空間ではなく現実世界での利用に近く、音声認識や画像解析を用いた支援が前提とされています。広告最適化やレコメンドなど、すでに収益へ直結する領域で使いやすい点も、投資家が評価した理由の一つと言えます。
資本は無限ではなく、どこかに投じれば別の領域に投じられません。メタバースに資金を続ければAIへの支出は縮小し、AIに集中すればメタバースの進展は遅れます。
この関係性は経済学でいう「機会費用=ある選択をすると他の選択肢を捨てることに伴う損失」の具体例です。Metaは「短期収益が見えるAI」と「未来潜在市場であるメタバース」の間で判断し、現時点ではAIに重心を置く戦略を選びました。
まとめ
- Facebookは事業多角化と長期戦略を示すためMetaへ社名変更
- Reality Labsは2021年以降累計約700億ドルの損失
- 2025年にメタバース支出最大30%削減案が報じられ株価一時上昇
- 他社でもディズニーとマイクロソフトがメタバース投資を整理
- Metaは今後3年間でAIに6000億ドル投資予定
- 資本配分と機会費用が投資判断の軸になった
メタバース市場にはまだ大きな成長予測があります。それでもMetaがAIへ集中した判断は、企業が未来のどこに資本を投じるかという根本的なテーマを示しています。
あなたが経営者なら、巨大市場の可能性に挑むか、収益化が見える領域に集中するか、どちらを選びますか。技術の発展は早く、正解は常に一つではありません。ニュースを追いながら、企業発表や決算資料を読み込み、資本配分の意味と影響を自分の言葉で説明できるようになると、経済の見え方は大きく変わります。
今日のMetaの判断が10年後にどう評価されるのか──未来を見る視点を持ち続けてください。
