大阪メトロ最高益で社員に還元「一時金20万円」!万博は成功だった?
大阪メトロ、全社員に一時金最大20万円支給 万博盛況で最高益還元 | 毎日新聞
大阪メトロは、全社員約5000人に対し、賞与とは別に最大20万円の一時金を支給する。4~10月に開催された大阪・関西万博で利用客数が伸びて好業績となったことから、安定輸送を支えた社員に還元する。
大阪・関西万博(2025年4〜10月)は、開催中のにぎわいだけでなく、鉄道や観光の分野で大きな経済効果があったと報じられました。
一方で、海外パビリオン工事の代金未払い問題が深刻化し、「黒字万博」の裏側にある課題も注目されています。
鉄道各社で広がった「万博ボーナス」
大阪メトロは2025年11月、全社員約5,000人に最大20万円の一時金を支給すると発表しました。一律10万円に加え、交通事業本部の社員にはさらに10万円が支給されます。万博会場・夢洲に直通する地下鉄路線を運行したことで、4〜9月の利用客は前年同期比13.3%増の延べ5億2837万人に達し、中間決算は営業収益1,277億円(前年同期比25.3%増)、当期利益229億円(41.3%増)といずれも過去最高でした。
JR西日本も業績が大きく伸び、社員約2万9,000人に最大12万円の一時金を支給する方針です。万博グッズの販売や鉄道利用の増加が追い風となり、2025年9月中間決算で売上高と最終利益は過去最高を記録しました。
これらの支給は、企業の利益を働く人に還元する取り組みであり、家計と地域消費への波及を促す役割も果たしました。
万博が生んだ経済効果
帝国データバンクの調査(2025年10月)では、企業の約7割が「万博は日本経済に一定のプラス」と回答し、そのうち2割以上が「期待以上」と評価しています。来場者数は2,557万人で、当初想定の2,820万人には届きませんでしたが、収支は230〜280億円の黒字見込みとされました。
政府は万博の経済波及効果を約2.9兆円と試算し、民間の分析でも建設費や運営費、来場者の消費を合わせて3兆円規模と見込まれていました。鉄道分野だけでも、関西の主要7社で増収が1,500億円規模に達し、想定の5割増しだったと日経新聞(2025年10月)が報じています。
会場周辺以外でも、堺市で観光消費額が36億円超となるなど、万博の効果が地域に広がった事例もあります。反面、関西以外では「期待ほどではなかった」という声もあり、効果の体感には地域差がありました。
帝国データバンクアンケート調査結果
大阪・関西万博が日本の社会や経済に与えた効果(100点満点)

建設遅れと代金未払い──深刻な問題が残った現場
万博の華やかさの裏で、海外パビリオン工事をめぐる代金未払い問題が大きく取り上げられています。読売新聞(2025年10月)によれば、未払い額は10億円超に達し、11カ国の工事に関わった下請け企業から相談が寄せられています。関係業者は30社以上とされ、総額は数十億円規模との指摘もあります。
背景には、軟弱地盤の夢洲で行われた工事特有の難しさや、建設業界の慢性的な人手不足がありました。工期遅延による24時間体制の施工が続き、追加工事が発生した一方で、契約書が十分に整備されないまま進んだ案件も多く、口約束の作業分が未払いになるケースが報告されています。
一部の元請け企業や海外イベント会社が、遅延などを理由に追加費用の支払いを拒む例もあり、経営悪化や職人流出に苦しむ中小企業が生まれました。閉幕後には、解体工事でも同様の懸念が出ており、跡地利用や事業者選定に影響する可能性も指摘されています。
帝国データバンクアンケート調査結果
企業からの声

成功と課題をどう捉えるか
経済的指標だけを見ると、大阪・関西万博は「黒字」「経済効果」という成功が強調されます。しかし、現場では未払い問題や急ピッチの工事による負担があり、準備段階の契約管理やリスク分担の不備という課題も明らかになりました。
「利益が出た企業」と「代金が支払われない下請け企業」が同じイベントの中で存在したことは、大規模イベントにおけるリスク管理の重要性を示しています。メリットだけでなく、誰がどのような負担を抱えたのかを合わせて見る必要があります。

まとめ
- 大阪メトロは最高益を記録し、全社員に最大20万円の一時金を支給
- JR西日本も過去最高決算を達成し、最大12万円の一時金支給へ
- 万博全体では企業の約7割が「経済効果あり」と回答し、来場者は2557万人で黒字見込み
- 経済波及効果は政府・民間ともに約3兆円規模と試算
- 工事代金未払いは10億円超、関係業者は30社以上にのぼると報道
- 人手不足・契約不備・短い工期が未払い問題の背景に
- 一部中小企業では経営悪化や職人流出が発生
今回の大阪・関西万博では、明るい成果と深刻な課題が同時に生まれました。ニュースを見るときは片方だけではなく、複数の事実を組み合わせて理解することが大切です。次の問いを家族で話し合ってみてください。
- 企業が利益を出したとき、社員への一時金以外にどのような還元方法があるでしょうか。
- イベントの成功の裏で、なぜ未払い問題が起きてしまったのでしょうか。
- 「経済効果」を考えるとき、売上以外にどのような指標を見ると理解が深まるでしょうか。
万博のニュースをきっかけに、「利益」「負担」「契約」「責任」など、経済を構成するさまざまな要素に目を向けてみてください。数字だけでなく現場の視点を持つことで、社会の仕組みをより立体的に理解できるようになります。

