IRENA総会で浮かび上がった再生可能エネルギーと世界経済の行方

私たちが使う電気のつくり方は、いま世界で大きく変わりつつあります。太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、これまで「地球温暖化対策のためのエネルギー」として語られることが多くありました。
しかし最近では、国際会議や政策の場で、経済や雇用、産業競争力と結びつけて議論される機会が増えています。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の年次総会でも、再生可能エネルギーは環境政策にとどまらず、各国の経済戦略やエネルギー安全保障と深く関わるテーマとして扱われました。一方で、日本では導入の進み方や電源の構成に独自の課題があり、世界との違いが指摘されています。

このエネルギー転換は、企業活動や雇用、電気料金など、私たちの生活にどのような影響を与えているのでしょうか。環境だけでは語りきれない再生可能エネルギーの「もう一つの顔」を、データをもとに整理していきます。

まずはクイズで考えてみよう

2024年時点で、世界で新たに増えた発電設備のうち、再生可能エネルギーが占める割合に最も近いものはどれでしょうか。

A. 約90%
B. 約70%
C. 約50%

→正解は「A. 約90%」です。

国際機関の統計では、ここ数年、新しく増える発電設備の多くを再生可能エネルギーが占めています。背景には、太陽光や風力のコスト低下や、各国の政策支援、企業の電力調達の変化などが関係していると整理されています。
ただし、国ごとに導入のスピードや課題は異なります。詳しい仕組みはこれから見ていきましょう。

世界で進む再生可能エネルギーの拡大

IRENAの統計によると、2024年に世界で新たに追加された発電設備のうち、およそ90%が再生可能エネルギーでした。設備容量全体では、世界の再生可能エネルギーは約4,400ギガワットに達しています。特に太陽光発電と風力発電の増加が大きく、中国、ヨーロッパ連合、アメリカが主要な導入地域とされています。

電力需要が増える中で、その増加分を再生可能エネルギーが支えている点も特徴です。このため、再生可能エネルギーは「補助的な電源」から「主力電源の一つ」へと位置づけが変わりつつあります。これは、環境政策だけでなく、エネルギーコストや産業構造にも影響を与える変化です。

一方、日本の状況を見ると、2024年時点で電力に占める再生可能エネルギーの比率は約26〜27%とされています。太陽光の比率が高い一方、風力は1%前後にとどまっており、欧州主要国と比べると構成に違いがあります。地理条件や送電網の制約、制度設計の違いが背景にあると指摘されています。

経済とビジネスから見た再生可能エネルギー

再生可能エネルギーは、経済の面でも注目されています。
IRENAなどの報告では、再生可能エネルギー関連産業が、発電設備の製造、建設、運転・保守、蓄電池やデジタル制御といった分野で雇用を生み出していると示されています。世界全体では、数千万規模の雇用につながる可能性があるとされています。

また、太陽光や風力は燃料を必要としないため、設備導入後の運転コストが低い点が特徴です。長期的には、化石燃料価格の変動に左右されにくい電源として、電力コストの安定に寄与する可能性があると整理されています。輸入燃料への依存を減らせる点は、エネルギー安全保障の観点からも重要です。

ただし、課題もあります。発電量が天候や時間帯に左右されるため、蓄電池や送電網の整備が欠かせません。さらに、大規模な発電設備には多額の初期投資が必要で、政策や市場環境の変化によって事業の採算が影響を受けやすい点も、ビジネス上の論点となっています。

私たちの生活に近い影響

再生可能エネルギーの拡大は、生活者にも影響します。燃料費がかからない発電が増えることで、長期的には電気料金の安定につながる可能性があるとする分析があります。一方で、固定価格買取制度などの支援策に伴う費用が、電気料金に上乗せされる場合があり、短期的には負担を感じる人もいます。

健康面では、石炭や石油を燃やす発電を減らすことで、大気汚染物質が減少し、医療費の抑制につながる可能性が指摘されています。また、送電網が整っていない地域では、小規模な再生可能エネルギーと蓄電池の組み合わせによって、電力へのアクセスが改善した事例も報告されています。

その一方で、風力発電の騒音や景観の変化、大規模太陽光による土地利用をめぐり、地域での調整が課題になるケースもあります。再生可能エネルギーは技術だけでなく、社会的な合意形成が欠かせないテーマでもあります。

なぜ「増えているのに不安も残る」のか

なぜ、新しく増える発電設備の多くが再生可能エネルギーである一方で、電気料金や安定供給への不安が残っているのでしょうか。それは、技術の進歩によるコスト低下のスピードと、制度やインフラの整備が追いつくスピードに差があるためです。

このギャップが、メリットと負担が同時に見える「移行期ならではの状況」を生み出しています。

まとめ
  • 世界では新設発電設備の約9割を再生可能エネルギーが占めている
  • 日本の再エネ比率は上昇しているが国際的には低めである
  • 再生可能エネルギーは雇用や産業にも影響を与えている
  • 燃料を必要としない点は長期的なコスト面で特徴となる
  • 制度やインフラ整備が追いつかない課題も残っている

これからの時代、エネルギーは「買うもの」から「自分たちで管理し、賢く使うもの」へと変わっていくかもしれません。皆さんの家庭や学校、地域で、天気の良い日にだけ実施できる活動や、電気が足りない時に節電して貢献する仕組みは作れるでしょうか。

また、アメリカのような「自国優先のエネルギー政策」と、インドやIRENAが求める「国際協力によるエネルギー転換」のどちらが、最終的に世界全体の経済を安定させると思いますか。正解は一つではありませんが、この「エネルギーの主権」を巡る対立と協力のドラマが、皆さんの将来の仕事や生活環境を決定づける重要な要素になることは間違いありません。ぜひ、最新のニュースを通じて、自分なりの「未来のエネルギーのあり方」を探究してみてください。