値下げ競争が日本を危うくする?ソフトバンク社長「値下げ競争で技術開発力が低下する」
携帯値下げのせいで、「安いだけの国になり、開発力が落ちる」 ソフトバンク宮川社長が危惧すること - ITmedia Mobile
ソフトバンクの宮川潤一社長が2025年2月10日の決算説明会で、日本の携帯電話料金に言及する場面があった。携帯電話料金をめぐっては、菅義偉首相が4割値下げを推進してきた。近年では、「ahamo30GB化」の余波が続く。
日本の携帯電話料金は近年大幅に値下げされ、消費者にとっては嬉しいニュースです。
しかし、この価格競争が続くことで、通信業界全体にどのような影響をもたらすのでしょうか?例えば、通信インフラの維持や技術開発費の削減、人材流出のリスクが指摘されています。
ソフトバンクの宮川潤一社長は、「安いだけの国」になることを懸念し、技術開発力の低下が日本の未来に深刻な影響を及ぼす可能性を指摘しています。通信業界の現状とその課題、解決策について考えていきます。
携帯料金値下げの背景と現状
政府の方針と競争の激化
2018年以降、日本政府は「携帯料金の値下げ」を強く推進してきました。その結果、楽天モバイルの参入やNTTドコモの「ahamo」のような低価格プランが次々と登場し、価格競争が激化しています。楽天モバイルは月額3278円で無制限プランを提供し、ドコモはデータ容量を20GBから30GBに増量しました。
これらの動きは消費者にとってメリットがありますが、通信企業の収益構造には大きな圧力がかかっています。
企業の収益と技術投資の関係
宮川社長は、「通信料金を下げ続けるだけでは、従業員の給与や研究開発費を確保できない」と指摘しています。企業が十分な収益を得られなければ、新しい技術やサービスへの投資が難しくなります。その結果、業界全体の技術革新(新しい技術の開発)が遅れる可能性があります。
開発力低下がもたらす影響
1. 技術革新の停滞
通信業界では5Gや次世代通信技術への投資が必要不可欠です。しかし、収益減少により研究開発費が削減されると、新技術の開発スピードが遅れ、日本は中国やアメリカなどの技術先進国に後れを取るリスクがあります。
2. 関連産業への影響
通信技術はAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、自動運転(運転を自動化する技術)など、多くの新しい産業を支える土台です。開発力が低下すると、これらの分野で日本企業がリーダーシップを取ることが難しくなり、新しい市場での競争力を失う可能性があります。
3. 人材育成と雇用環境の悪化
研究開発の環境が整わない企業では、高度なスキルを持つエンジニア(技術者)や研究者が海外の企業へ転職する可能性があります。
実際に、日本の半導体分野では、台湾やアメリカの企業に転職する技術者が増えており、国内の技術力低下が懸念されています。また、人材育成への投資が減ることで、国内の技術力が低下し、将来的に競争力を失うリスクが高まります。
4. 国際競争力の低下
かつて日本の通信技術は世界トップクラスでした。しかし、「安いだけ」の市場構造になると、世界市場での競争力を失い、日本企業全体が海外進出で苦労する可能性があります。
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宮川社長の主張と業界の対応
宮川社長は、「健全な形で価格設定を見直し、収益構造を改善する必要がある」と提案しています。この意見には賛否があります。
一方では、「料金値下げは生活支援として重要だ」と評価されていますが、他方では、「技術革新や未来への投資がおろそかになる」と懸念する声もあります。
また、ソフトバンクは「Beyond Carrier」という戦略を掲げ、通信事業以外にもAIやIoTなどの新分野に挑戦しています。NTTドコモも「Smart Life」戦略を推進し、ヘルスケアや教育分野でのサービス拡充を進めています。KDDIは「au経済圏」の強化を図り、金融やエンターテインメント分野との連携を深めています。このような取り組みが日本全体の技術競争力向上につながる可能性があります。
持続可能な成長への道
宮川社長の懸念に応えるためには、以下のような取り組みが必要です:
- 持続可能な価格設定:短期的な値下げ競争から脱却し、適切な価格設定で収益構造を安定させる。
- 研究開発投資の強化:5Gや次世代通信技術への投資を増やし、日本企業としての競争力を維持する。
- 政府支援の強化:補助金や税制優遇措置を活用し、企業の研究活動を後押しする。
- 人材育成の充実:高度なスキルを持つ人材を国内で育成し、適切な雇用条件を整備する。
- 国際連携の推進:他国との共同研究やパートナーシップを強化し、グローバル市場で優位性を確保する。
まとめ
- 日本の携帯料金値下げは消費者にメリットをもたらした
- 通信業界全体には収益構造や技術開発力低下という課題を生んでいる
- 技術革新はAIやIoT、自動運転など多くの分野に影響を与えるため、通信インフラへの投資は不可欠
- 政府・企業・消費者が協力し、持続可能な成長モデルを構築することが求められる
未来には、自動運転車やスマートシティ、遠隔医療、スマート農業などの分野で通信技術が重要な役割を果たします。
例えば、自動運転車(運転を自動で行う車)ではリアルタイムのデータ通信が安全な走行を支え、スマートシティ(先進技術を活用した街づくり)では交通の流れを管理し、電力の無駄を減らすのに役立ちます。
日本がこれらの分野でリーダーシップを取るためには、短期的な価格競争だけでなく、長期的視点でのイノベーションへの投資が必要です。あなたなら、この問題にどう取り組みますか?
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