初任給30万円時代!大企業と中小企業の格差拡大の課題も
「初任給30万円」企業間格差拡大の懸念 社員全体の底上げも、中小は原資乏しく - 産経ニュース
優秀な人材を獲得するため、大企業を中心に新入社員の初任給を引き上げる動きが相次ぐ中、若手の給料が上司を上回る「逆転現象」が生じないよう、全体の給料を底上げする…
「初任給」とは、特に高校や大学など学校を卒業して就職した新入社員が、最初に受け取るお給料のことです。
最近では、大企業が競って初任給を30万円以上に引き上げる時代が到来し、大きな話題となっています。その背景やメリット、課題について見てみましょう。
初任給アップ競争が加速する背景
近年、大手企業で初任給を30万円以上に引き上げる動きが進んでいます。この流れは、特に2023年以降に加速し、初任給を引き上げた企業は全体の約20%に達し、さらに増加傾向にあります。
大企業の具体例
- ファーストリテイリング(ユニクロ):33万円に引き上げ
- 明治安田生命保険:33.2万円(全国転勤あり、固定残業代込み)
- 東京海上日動火災保険:最大約41万円(2026年4月実施、転勤あり)
- 三井住友銀行:30万円(2026年4月実施)
- 大和ハウス工業:25万円から35万円に増額
こうした動きは、新卒採用市場での競争力を高め、優秀な人材を確保するための戦略です。
初任給アップの理由
- 優秀な人材の確保
高い給料を提示することで、グローバル市場で活躍できる人材を採用しやすくなります。特に海外市場での競争を見据えた取り組みが重要です。 - 政府の賃上げ要請への対応
政府が経済成長を促進するために企業へ賃上げを要請しており、これに応える形で初任給が引き上げられています。
背景情報
- 日本の大卒初任給は、アメリカやスイスに比べて低水準
- 韓国にも初任給が追い抜かれている現状
中小企業の厳しい現状
一方で、中小企業は大企業ほど初任給を上げる余裕がない状況にあります。
- 中小企業の平均初任給:21万8118円
- 大企業の平均初任給:24万1082円
中小企業では「価格転嫁率」が低く、賃上げのための資金を確保するのが難しい現状があります。
価格転嫁率とは?
価格転嫁率とは、商品の価格にコスト増加分をどれだけ反映させるかを示す割合のことです。これが低いと、原材料費の上昇分を価格に上乗せできず、利益が圧迫されます。例えば、材料費が10%上がったとしても、価格を据え置く場合、企業の利益は減少します。
日本商工会議所の小林健会頭も、「初任給を上げると既存社員の給与も引き上げる必要が生じ、企業の負担が増す」と指摘しています。
初任給アップに伴う課題
社内の年代間格差
新入社員と中堅社員の間で給与のバランスが崩れ、不満が生じる可能性があります。
大企業と中小企業の格差拡大
給与差が広がり、中小企業から優秀な人材が流出するリスクがあります。
年功序列の崩壊
初任給アップの原資を確保するために、管理職の給与を圧縮する動きも見られます。
初任給アップの影響
プラスの影響
- 優秀な人材の確保
- 若手社員のモチベーション向上
- 離職率の低下
マイナスの影響
- 人件費の増加
- 既存社員との不公平感
- 採用コストの増加
短期的にはコスト増加が避けられませんが、長期的には生産性向上や社員の満足度向上が期待されます。
例えば、成果主義を導入し、業績に応じた報酬制度を設けるほか、研修プログラムを充実させてスキルアップを支援することが有効です。
まとめ
- 初任給30万円時代が到来し、大企業が積極的に給与を引き上げている
- 優秀な人材確保や政府の要請への対応がその背景にある
- 中小企業では経済的な制約から同様の対応が難しい現状
- 初任給アップの影響には、短期的なコスト増加と長期的な生産性向上の両面がある
- 具体的な人事戦略が成功のカギ
初任給アップは、私たちのキャリア選択や将来設計にも影響を与える重要なテーマです。
どのような職場環境で働きたいかを考える際、「給料の高さ」と「働きがい」のバランスを意識してみましょう。また、他国の給与水準や労働環境を比較してみると、日本企業の課題や強みが見えてきます。
さらに、グローバル化が進む中で、企業がどのように競争力を高めていくのかを考えることは、未来の働き方を考える良いきっかけとなるでしょう。
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