スーパー戦隊が終わる日:50年のヒーロービジネスが映す少子化とテレビ離れ
【独自】スーパー戦隊、放送終了へ テレ朝、半世紀の歴史に幕|47NEWS(よんななニュース)
テレビ朝日系で放送されている特撮ヒーロー番組「スーパー戦隊シリーズ」が、現在の「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」を最後に終了することが30日、関係者への取材で分かった。1975年開始の第1作「秘密戦 ...
1975年から約半世紀にわたり放送されてきたテレビ朝日の「スーパー戦隊シリーズ」が、2025年の「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」をもって終了することが報じられました。
子どもや家族に親しまれたこの番組は、日本のエンタメ産業・おもちゃ市場・若手俳優育成など多面的な影響を与えてきました。
50年続いた人気シリーズがなぜテレビの前から姿を消すことになったのでしょうか。
半世紀の歩みとヒーローの役割
スーパー戦隊シリーズは1975年「秘密戦隊ゴレンジャー」でスタート。個性的な色分け・武器など多様なヒーローが協力して悪に立ち向かう「チーム」の価値観を描き続けてきました。毎年新作が放送され、2025年の「ゴジュウジャー」で49作目。今は人気で有名な松坂桃李さんや横浜流星さんなども過去に出演していました。
ヒーローが稼いだお金 ― ビジネスモデルの今と昔
スーパー戦隊シリーズは、放送開始当初から画期的なビジネスモデルを築いてきました。それが、メディアミックス戦略です。
- 番組放送: テレビ朝日が番組を放送し、CMスポンサーから広告収入を得る。
- おもちゃ販売: メインスポンサーのバンダイが、ヒーローの変身アイテムや合体ロボットなどのおもちゃを開発・販売する。
- 映像・イベント展開: 東映が映画化や、ヒーローショーなどのイベントを開催し、追加の収益を上げる。
この3つの柱が連携することで、スーパー戦隊は巨大な経済圏を築いてきました。
売上の全盛期と現在
しかし、その収益構造は近年大きく変化しています。以下の表は、スーパー戦隊シリーズの売上推移を示したものです。
【スーパー戦隊シリーズ 売上高の推移(グループ全体)】
| 放送年 | 番組名 | 売上高(億円) | 
|---|---|---|
| 2008年 | 炎神戦隊ゴーオンジャー | 256 | 
| 2011年 | 海賊戦隊ゴーカイジャー | 202 | 
| 2013年 | 獣電戦隊キョウリュウジャー | 253 | 
| 2014年 | 烈車戦隊トッキュウジャー | 232 | 
| 2018年 | 快盗戦隊ルパンレンジャー VS 警察戦隊パトレンジャー | 102 | 
| 2020年 | 魔進戦隊キラメイジャー | 52 | 
| 2023年 | 王様戦隊キングオージャー | 65 | 
| 2024年 | 爆上戦隊ブンブンジャー | 64 | 
表から分かる通り、2010年代前半には200億円を超えていた売上が、近年では60億円台まで減少しています。こうした売上減少がシリーズ終了の直接的な引き金となったようです。
なぜ売上は減ってしまったのか?3つの大きな要因
スーパー戦隊が直面した課題は、主に以下の3つに集約されます。
1. 子どもの“遊び”の変化
- デジタルの台頭: スマートフォンやタブレットが普及し、YouTubeやゲームアプリといった無料または安価なデジタルコンテンツが子どもの遊びの中心になりました。
- おもちゃ離れ: 高価な合体ロボットなどのフィジカルな玩具への関心が相対的に低下しました。
2. 少子化の影響
- メインターゲットである子ども(特に男の子)の人口が、年々減少しています。
 例えば、2000年に約119万人だった年間出生数は、2023年には約72万人まで落ち込んでいます。市場そのものが縮小しているのです。
3. メディア環境の変化
- テレビ離れ: リアルタイムでテレビ番組を視聴する習慣が薄れ、広告収入を主軸とするビジネスモデルが厳しくなりました。
- 制作費の高騰: 視聴者の目が肥える中で、CGや特撮のクオリティを維持・向上させるための制作コストは上がり続けています。収入減と支出増のダブルパンチが経営を圧迫しました。
一方で…好調な「仮面ライダー」との違い
興味深いのは、同じ東映・テレビ朝日・バンダイが手がける「仮面ライダーシリーズ」は好調を維持している点です。
【2025年3月期 主要IP別売上高】
| IP(ブランド)名 | グループ売上高(億円) | 
|---|---|
| 仮面ライダーシリーズ | 307 | 
| ONE PIECE | 1,395 | 
| DRAGON BALLシリーズ | 1,906 | 
| ガンダムシリーズ | 1,535 | 
| プリキュアシリーズ | 79 | 
| スーパー戦隊シリーズ | 64 | 
仮面ライダーの売上はスーパー戦隊の約4.8倍に達しています。その理由として、以下が挙げられます。
- 大人ファンの獲得: 変身ベルトなどのコレクション性の高い玩具が、子どもだけでなく大人のコレクター層の心をつかんでいます。
- 多様なメディア展開: 映画や配信コンテンツ、大人向けの派生作品(例:「仮面ライダーBLACK SUN」)などを積極的に展開し、収益源を多様化させています。

まとめ
- スーパー戦隊シリーズは、2025年放送作を最後に約半世紀の歴史に幕を下ろす
- 終了の主な理由は、制作費に見合う収益(おもちゃ販売・広告収入など)を上げられなくなったこと
- 全盛期には年間250億円を超えた売上も、近年は60億円台にまで減少
- 背景に子どもの遊びのデジタル化、少子化、テレビ離れといった社会構造の変化
- 「仮面ライダー」は大人ファンの支持を得て、年間300億円規模の売上を維持し好調
身近なヒーロー番組の終了は、経済や社会の変化が直撃している例です。なぜ人気番組でも売上や市場環境で終わるのか、どんな新しいビジネスモデルが次の時代に求められるか考えてみてください。
家族や友だちと「自分が好きだったヒーロー番組」「番組から学んだこと」を話題にして、エンタメ×経済の関係を話し合うのもおすすめです。
そして、現代のデジタル社会では好きなコンテンツをどう支えていくか、消費やマーケティングの仕組みを探ってみることが今後の社会を生きるヒントになります。


 
  
  
 