「モンスター」を巡る闘争:世界の商標問題

ポケモンにも容赦なし、米モンスターエナジー社「モンスター」を含む他社の商標登録に異議…クレーム連発へ“特許庁・裁判所”が下した驚がくの判定 - ライブドアニュース

モンスターエナジー社が他社の商標登録に異議申立てをしたと識者が綴った。モンスターエナジーに便乗しているとして、訴えられたという。2024年までに163戦0勝163敗だったそうで、専門家の間で笑いものになった

「商標」という言葉を聞いたことがありますか?
商標とは、企業が自分の商品やサービスを他の会社のものと区別するために使う名前やマーク、デザインのことです。例えば、ポケモンのロゴやコカ・コーラの赤い缶のデザインなどが商標にあたります。

商標権があれば、他の会社が似たような名前やマークを使うのを止めさせることが可能です。しかし、この権利を行き過ぎた形で主張するケースが増えており、「エセ商標権」として問題視されています。今回は、その実態と影響について考えてみましょう。

商標の基本と役割

商標とは?
商標とは、企業が自分の商品やサービスを他のものと区別するために使う重要な資産です。商標があることで、商品やサービスが模倣品や類似品と混同されるリスクを減らし、ブランド価値を守ることができます。

企業は「商標権」という権利を取得することで、自分の商標を守ることができます。商標権を取得するには、各国の特許庁に出願し、審査を通過する必要があります。例えば、日本では特許庁に申請書を提出し、名称やデザインが他社と類似していないかを審査されます。この審査を通過すると商標登録が認められます。

エセ商標権の問題
しかし、商標権を乱用することで、他社や一般の人々に不利益を与える事例が増えています。一般的な言葉を商標として登録し、使用を制限する行為は、言葉の自由な利用を阻害する恐れがあります。

※「エセ」とは
本物ではない偽物や似せたものを意味します。この場合、「エセ商標権」とは、正当な権利のように見えて実際には乱用や不当な主張をする商標権を指します。例えば、誰でも使える一般的な言葉を無理に商標登録し、他人に使用を制限する行為が挙げられます。このような行為は商標の本来の目的を損なう可能性があります。

モンスターエナジーのケース:商標の過剰主張

なぜ関係のない名前にも商標を主張するの?

一見関係のなさそうな名前や表現に対しても商標権を主張する理由の一つは、競合他社や市場におけるブランドの混乱を防ぐことです。
たとえば、類似した名前や言葉が使われることで、消費者が商品やサービスを混同するリスクが高まります。企業はこれを防ぐために、広範囲の権利を確保しようとします。

例えば、モンスターエナジーが多岐にわたる分野で「モンスター」の商標を主張するのは、ブランドイメージを損なう可能性がある使用を予防するためです。
さらに、Apple Inc.が他の企業名や製品名に「Apple」という言葉が含まれる場合でも異議を申し立てるのは、ブランド価値を維持するための戦略です。これらのケースでは、ブランドの認知度を活用して市場での優位性を確立しようとする意図が見られます。

ただし、このような行為が過剰になると、他の企業やクリエイターの表現や創造性を制限し、社会的な批判を招く可能性があります。

標的になった有名作品

以下のような有名な作品がモンスターエナジーの標的となっています。それぞれの事例では、商標紛争の結果や影響が異なります。

たとえば、ディズニー/ピクサーの『モンスターズ・ユニバーシティ』は、広く知られた商標の範囲外と判断され、結果的に商標主張が退けられました。
一方で、『ポケットモンスター』や『モンスターハンタークロス』のケースでは、最終的に双方のブランドが混同されないことを条件に、商標権の範囲が再定義される結果となりました。こうした紛争は、企業の商標戦略が市場や消費者の認識に与える影響を浮き彫りにしています。

  • ディズニー/ピクサーの「モンスターズ・ユニバーシティ」
  • 任天堂の「ポケットモンスター」
  • カプコンの「モンスターハンタークロス」
  • MIXIの「モンスターストライク」

これらの作品は多くの人々に親しまれており、エナジードリンクとは無関係です。このような過剰な主張は批判を集めています。

日本での「エセ商標権」事例

ワインバーの独占問題
あるワイン会社が「ENOTECA」(イタリア語でワインバーの意味)という言葉を商標登録し、全国の「エノテカ」という名前のお店に使用中止を求める警告を送りました。しかし、この言葉は一般的なものであるため、最終的に裁判で商標権が否定されました。

整骨院の「やわらぎ」問題
横浜の整骨院が「やわらぎ」という一般的な言葉を商標登録し、他の整骨院にも警告を送りましたが、問題視され、権利が取り消されました。

大企業の意外な商標出願
以下のような大企業による商標出願も批判を浴びました:

  • 「アマビエ」(電通)
  • 「スマホ」(パナソニック)
  • 「ボランティア」(KADOKAWA)
  • 「ギコ猫」(タカラトミー)
世界の商標問題

皇寿 対 黄寿

健康飲料の名称として使用されていた「皇寿」と「黄寿」は、発音が同じ「こうじゅ」となり、消費者が混同する可能性が高いと判断されました。
このケースでは、読み方の類似性が問題となり、裁判所は「混同の恐れがある」として商標権の侵害を認定しました。
結果として、「黄寿」の商標登録が無効となり、同名の商品の販売が停止されました。この判決は、商標権の適正な範囲を定める重要な事例とされています。

Apple Corps 対 Apple Inc.
イギリスのバンド、ビートルズが設立した音楽会社「Apple Corps」と、テクノロジー企業の「Apple Inc.」は、社名およびロゴの類似性を巡って長年にわたり法的紛争を繰り広げました。最終的には和解に至りましたが、商標の使用範囲や業種の違いが焦点となったケースです。

McDonald's 対 Supermac's
アイルランドのファーストフードチェーン「Supermac's」は、名称が「McDonald's」と類似しているとして、マクドナルドから商標侵害で訴えられました。しかし、欧州連合知的財産庁は、両者の名称が消費者に混同を生じさせるものではないと判断し、Supermac'sの勝訴となりました。

Adidas 対 Forever 21
スポーツブランドの「Adidas」は、ファッションブランド「Forever 21」が自社の三本線のデザインを模倣したとして訴訟を起こしました。このケースでは、デザインの特徴的な要素が商標として保護される範囲について議論が行われました。

商標権の正しい使い方

商標権は、自社の商品やサービスを守るための重要な権利です。適切に利用すれば、以下のメリットがあります:

  • 他社との区別を明確にする
  • 顧客の混乱を防ぐ
  • ブランド価値を高める
  • 法的な保護によって競争優位性を確保する
  • 顧客に信頼感を与え、リピーターを増やす
  • 知的財産としての資産価値を向上させる

しかし、一般的な言葉や広く使われている表現を独占しようとすることは、創造性や公正な競争を妨げる可能性があります。商標権と言葉の自由な利用のバランスを取ることが重要です。

まとめ
  • 商標は企業のブランドを守る重要な権利
  • 「エセ商標権」の過剰な主張は、不公正な状況を生み出す
  • 商標権を適切に利用し、言葉の自由を尊重するバランスが必要

以下について考えてみましょう:

  • あなたが新しい飲料ブランドを立ち上げることを計画しているとします。ブランド名として一般的な言葉(例えば「フレッシュ」や「エネルギー」)を使いたい場合、その言葉を商標登録することが可能だと思いますか?
  • 競合企業があなたのブランド名と似た名前で新商品を発売しました。どのような対応策が考えられるでしょうか?
  • 商標を持つことで得られる利点や、逆に持たないことで直面するリスクについて話し合ってみてください。

こうした問題を考えることは、ビジネスや創造活動について深く理解する良い機会です。あなたの意見やアイデアをぜひ周りの人と話し合ってみてください。

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