SNS時代の危機対応|トミカ自主回収が示す企業のブランド戦略

「過保護すぎる」「子どもはケガして学ぶもの」という声も…タカラトミー《おもちゃ4万個自主回収》の"やりすぎ対応"が正解であるワケ | 消費・マーケティング | 東洋経済オンライン

大手おもちゃメーカー・タカラトミーは9月8日、ミニカーのトミカを走らせるおもちゃ「グランドモールトミカビル(トミカ55周年記念特別仕様)」約4万個を自主回収することを発表した。東京都内で開催されたイベン…

2025年9月、大手おもちゃメーカーのタカラトミーが、人気商品「グランドモールトミカビル」約4万個を自主回収すると発表しました。こどもが指を挟む事故が起きたためですが、SNSでは「過保護すぎる」という声も見られました。けれども、こうした迅速な対応は現代のビジネスでは「正解」とされています。
この自主回収の背景と企業が信頼を守るために取るべき行動について見てみましょう。そして企業がなぜ大きなコストを払ってでも安全を優先するのか、一緒に考えてみましょう。

事故と迅速な対応

タカラトミーは、2025年7月に発売した「グランドモールトミカビル(55周年記念仕様)」で、こどもが指を挟んでけがをする事故が2件発生したと発表しました。購入者アンケートでも同じような声が12件届いていました。

これを受けて会社はただちに自主回収を決定し、公式サイトやニュースを通じて情報を公開しました。購入者には代金を返金し、対応の透明性とスピードが重視されました。

SNSでの議論
SNS上では「こどもはケガをして学ぶもの」「この程度で回収は大げさだ」という意見もありました。しかし現代では、特にこども向け商品に高い安全性が求められます。そのため「やりすぎ」と見える対応が、企業の信頼を守る上では必要なのです。

自主回収にかかるコストと目的

自主回収には多額の費用がかかります。

  • 回収・告知費用: 商品回収や新聞・ウェブでの告知に必要な費用
  • 廃棄・代替品費用: 回収後の廃棄や代替品準備の費用
  • 人件費: 問い合わせに対応するスタッフの人件費

食品業界では1億円以上かかる例もあり、過去にカネボウ化粧品が商品の肌トラブルで約50億円の費用を負担した事例もありました。

それでも企業が回収を行う理由は3つあります。

  1. 消費者の安全確保: 事故の拡大を防ぐため
  2. 信頼とブランド価値の維持: 誠実な対応は長期的に信頼を強める
  3. 法的・社会的責任: 放置すると訴訟や批判のリスクが高まる

自主回収は短期的には損失でも、長期的には信頼を守るための投資なのです。

SNS時代のクレーム対応

SNSの時代では、ネガティブな情報はすぐに拡散されます。「炎上」は売上や株価に影響するため、企業にとって大きな課題です。

成功するクレーム対応のポイントは以下の3つです。

  1. スピード: 問題が起きたらすぐに対応し、公表すること。
  2. 誠実さ: 隠さず事実を認め、謝罪すること。
  3. 透明性: 何が起きて、どう解決するのかを明確に発信すること。

タカラトミーの対応はこの3点をおさえており、「やりすぎ」と言われつつも「誠実」と評価されたのはそのためです。

まとめ
  • タカラトミーは事故を受け、迅速に自主回収を実施
  • 自主回収には高額な費用がかかるが、信頼と安全を守るために必要
  • SNS時代ではスピード・誠実さ・透明性がクレーム対応の鍵
  • 「やりすぎ」と見える対応こそが、企業の長期的な利益につながる

今回のタカラトミーの例は、おもちゃの問題にとどまらず、現代の企業にとって「信頼」がいかに大切かを示しています。信頼は一度失えば取り戻すのが難しいものです。だからこそ、企業は短期的な損失を受け入れてでも、消費者の安全を守る行動をとります。
皆さんもニュースで自主回収や謝罪会見を見たとき、「なぜこの会社はこうした判断をしたのか」と考えてみてください。もし自分が社長だったらどのように行動するかを想像することで、ビジネスや社会の仕組みをより深く理解できるでしょう。