広告の未来はテレビじゃない?キットカットが使ったSNS戦略とは

「CMに何十億円投資しても売上も利益も変わらない」かつてキットカットのCMを中止したネスレ日本元社長・高岡浩三氏が考える“テレビCMの価値”「『広告しないと商品が売れない』は時代遅れ」 | マネーポストWEB

 世間の大きな注目を集めたフジテレビ問題は、3月末がめどとされる第三者委員会の調査報告で一つの山場を迎えると見られる。フジテレビでのCM放映見送りを実施したスポンサー企業は、その後、どう対応するのか。...

フジテレビの不祥事をきっかけに、多くの企業がテレビCMの効果を見直す動きが広がっています。実は20年以上前に、ネスレ日本の元社長・高岡浩三氏はすでにテレビCMの限界に気づき、「キットカット」のテレビ広告を中止するという大胆な決断をしていました。
CMに何十億円投資しても売上も利益も変わらない」という彼の見解は、今の時代にも大きな示唆を与えています。

ネスレがCMをやめた理由とは?

高岡氏がキットカットのテレビCMを中止した最大の理由は、20億円以上の広告費に見合う効果が得られていなかったことです。当時、キットカットの利益率はわずか2〜3%にとどまっており、投資効率の悪さが目立っていました。

外資系企業であるネスレでは、投資に対するリターン(ROIC)が厳しく評価される文化があります。高岡氏は「日本の企業もようやく投下資本利益率を重視し始めたが、外資では40年前から常識だった」と述べています。

ある日、テレビ番組で医師が赤ワインの健康効果を紹介すると、その翌日に赤ワインが飛ぶように売れた現象を見て、「利害関係のない第三者による紹介のほうが、テレビCMよりも効果がある」と確信したのです。

「受験生応援キャンペーン」の大成功

CMを中止した後、高岡氏のチームは「受験生応援キャンペーン」を立ち上げました。キットカットの語感が九州方言の「きっと勝つとぉ!」に似ていることに着目し、2003年1月のセンター試験時に、東京大学や慶應義塾大学周辺でサンプリングを実施。

その後、キャンパスのゴミ箱に大量のキットカットの空き箱が見つかり、学生たちがブログで話題にしたことで、自然な口コミが一気に拡散しました。キットカットは受験生のお守りとしての地位を確立し、売上は5倍、利益は10倍に伸びる結果となりました。

「もしこれをテレビCMでやっていたら、しらけた反応になっていたでしょう」と高岡氏は語ります。

なぜ企業はいまだにCMを使うのか?

多くの企業がテレビCMを続けている理由としては、ブランドイメージの維持や新商品の認知度向上などが挙げられます。特に新しい商品を世の中に広める段階では、テレビCMは依然として効果的です。

しかし、高岡氏は「すでに知られているブランドにとって、CMは費用対効果が非常に低い」と指摘しています。単なるイメージ広告では、売上や利益に直結しない場合も多いのです。

広告ゼロでも売れる仕組みとは?

高岡氏が実現した「広告ゼロでも売れる仕組み」の中心には、以下のような戦略があります:

  1. 話題性のある商品設計:思わず誰かに話したくなるようなストーリーやメッセージを持つ商品を作る
  2. PRと口コミの活用:広告よりも、第三者の紹介やユーザーの口コミを重視
  3. 共感を呼ぶテーマ選び:受験や応援など、生活者が感情的に共感できるテーマを設定
  4. SNSを最大限に活用:インターネットやSNSを使って情報を自然に広げる
今後のマーケティングはどう変わる?

フジテレビの問題をきっかけに、企業のテレビ広告離れが進む可能性があります。高岡氏は「テレビCM自体は今後も残るが、“広告がないと商品が売れない”という考えは時代遅れ」と指摘します。

現代の消費者は、広告よりもSNS上の口コミやレビューに信頼を置く傾向が強まっています。価値のある商品やサービスであれば、広告がなくても売れる時代になったのです。

まとめ
  • テレビCMは高コストのわりに、利益につながらない場合がある
  • 話題性や共感を重視したPR戦略が効果を発揮
  • SNSや口コミが広告の代わりとなる時代に突入
  • 高額な広告より、消費者の共感と情報拡散を重視するマーケティングが重要

本当に価値のある商品は、誰かに紹介したくなる力を持っています。あなたの身の回りにあるヒット商品も、テレビCMだけではなく、SNSや口コミによって広まっているかもしれませんね。

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