任天堂株価急落で時価総額2兆円減少!メモリ価格高騰がSwitch 2・パソコン・スマホに広がる?
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2025-12-10/T71GJ5T9NJLS00
2025年12月10日、任天堂の株価が急落し、わずか数日で時価総額が約2兆2,000億円消えるという衝撃的なニュースが市場を駆け巡りました。原因として挙がったのは、ゲームの売れ行きではなく、製品に使われる「メモリ(記憶媒体)」の価格急騰です。たった一つの部品価格が、日本を代表する企業の価値を揺さぶり、新型ゲーム機「 Switch 2」やパソコン、スマホといった生活必需品の価格にまで影響を及ぼしています。
では、なぜ今メモリが世界で不足し、価格が跳ね上がっているのでしょうか。
任天堂株2兆円減少──市場が恐れた「利益圧迫」
2025年12月10日、任天堂の株価は一時4.7%安の11,340円まで下落し、5月以来の安値を記録しました。12月の営業日8日中7日で株価が下ってしまう厳しい状況でした。短期間で失われた時価総額は約2兆2,000億円に上ります。
投資家が不安視したのは、世界的なメモリ価格の高騰です。任天堂はゲーム機本体とソフトの両輪で利益を確保してきましたが、本体に使う部材コストが急増すれば、利益が減るか、価格を上げて消費者の購入意欲を下げるリスクが生じます。市場は、こうした収益圧迫を敏感に読み取り、任天堂株を売りに動いたと見られます。

みんかぶより
スイッチ2に直撃するメモリ・ストレージの値上がり
市場調査会社トレンドフォースによると、「Nintendo Switch 2」に搭載される12GB RAMモジュールの価格は今期だけで41%上昇しました。データ保存に使うNANDフラッシュも約8%値上がりしています。
ゲーム機では、メモリやストレージがコスト全体の大きな割合を占めます。これらが値上がりすると、本体価格や利益率に直結します。加えて、スイッチ2は内蔵ストレージ容量が限られているため、ユーザーが追加購入するSDカード類の価格もNAND価格上昇の影響を受けて高くなる傾向があります。
2025年のブラックフライデーでは、Switch 2のセット商品が50ドル(約8,000円)引きで販売され「異例の早期値下げ」が話題になりました。しかし部材価格の高騰が続く限り、この値下げの余地は今後ますます小さくなる可能性があります。
なぜ今メモリが高い?──AIブームと生産調整の二重衝撃
メモリ価格急騰の背景には二つの要因があります。
1. 生成AIブームによる需要爆発
AIを動かすデータセンターでは、大量のデータを高速処理するため、通常のパソコンとは比べ物にならないほどの高性能メモリが必要です。OpenAIなどAI企業は大手メーカーと巨額の供給契約を結び、世界のメモリ供給の多くをAI用途が占めています。
その結果、ゲーム機やPC向けの従来型メモリの供給が後回しになり、価格上昇につながっています。
2. メーカーによる意図的な供給抑制(減産)
SamsungやSK hynixなどの大手メーカーは、過去の在庫過剰での赤字を教訓に、生産を絞り価格維持を図ってきました。そこへAI需要が重なり、市場の需給バランスが崩れたことで契約価格は前年比数割から倍近くまで上昇しました。
PC・スマホにも波及──20%値上げの可能性
メモリ高騰の影響は、パソコン業界で特に深刻です。デルやHP、レノボなど大手メーカーは、メモリやSSDのコスト上昇を理由にPC価格を最大15〜20%引き上げる可能性を示しています。すでに一部のパーツやBTOパソコンで値上がりが始まっており、「値上げ前の購入」を促す動きも見られます。
スマートフォンでも、メモリ・ストレージの割合が大きいことから、2026年モデルの価格は5〜10%以上上昇する見込みです。ハイエンド機種では数千円から1万円以上のコスト増になる可能性もあり、買い替えの負担は確実に増えるとみられています。

部品価格の変動が社会に広がる
今回のメモリ高騰は、一つの部品がどれほど大きな経済的インパクトを持つかを示す典型例です。AIという技術革新が起きると、そのために必要な資源に供給が集中し、従来市場にしわ寄せが起こります。結果として、ゲーム機・PCの価格や企業の利益に影響し、株式市場はその変化をいち早く織り込みます。
企業はコスト上昇時に「値上げして消費者に負担を求める」か、「自社で負担して利益を削る」かの選択を迫られます。現在の状況は、パソコンメーカーが値上げに動き、ゲーム機メーカーは慎重な姿勢を続けている段階と言えるでしょう。
まとめ
- 任天堂株はメモリ高騰懸念で4日続落し、時価総額約2兆2,000億円が失われた
- Switch 2向けRAMは41%、ストレージは8%値上がりし利益確保の課題となっている
- AI需要とメーカーの減産が価格急騰を引き起こした主因である
- パソコンメーカー大手は部材高騰を理由に最大15〜20%の値上げを示唆
- スマホや周辺機器にも影響が広がり、2026年にかけ負担増が予測される
もしあなたが任天堂やパソコンメーカーの社長だったら、この「メモリショック」にどう向き合うでしょうか。「性能を維持するために多少高くても良い製品を作る」のか、「手に取りやすい価格を優先するのか」。企業の判断一つで市場の反応は大きく変わります。
また、消費者であるあなた自身は、これからの買い物をどう考えますか。「値上がり前に購入する」のか、「価格が落ち着くまで待つ」のか。店頭の価格の裏には、世界規模の供給争奪戦や企業の戦略が絡んでいます。
日々のニュースを、「自分の生活につながる出来事」として読み解き、価格の変化がどこから来ているのか想像してみてください。それが経済を理解する第一歩になります。
