EUが新ルール「売れ残り服の廃棄禁止」:返品の3分の1が処分される現実
Commission adopts new measures to stop the destruction of unsold clothes and shoes
The European Union moves closer to a circular economy by banning the destruction of unsold apparel and requiring large companies to disclose discarded volumes.
オンライン通販では、サイズが合わなかったりイメージと違ったりした服を無料で返品できるサービスが広がっています。便利な仕組みですが、その裏で「一度も着られないまま処分される服」が一定数存在すると報告されています。ヨーロッパ連合(EU)は、こうした売れ残り衣類や返品商品の扱いを見直すため、新しいルールを導入しました。
一方で、中古ファッション市場は世界的に拡大しており、古着や中古ブランド品の需要も増えています。それでも、新品のまま使われない服が存在するのはなぜなのでしょうか。返品制度 在庫管理 ブランド戦略 中古市場という複数の仕組みがどのように関係しているのかを、データと制度から整理します。
Q. EUの分析によると、市場に出た繊維製品のうち「一度も使われないまま破壊されている」割合に最も近いのはどれでしょうか?
A. 約0.5~1%
B. 約2~3%
C. 約4~9%
→ 正解は C. 約4~9% です。
EUの環境機関は、市場に投入された繊維製品のうち、一定の割合が使われないまま処分されていると推計しています。背景には返品の増加や在庫管理の方法など、販売の仕組みの変化が関係していると指摘されています。
EU新ルール:売れ残り廃棄を止める
EUは2026年2月、エコデザイン製品規則(ESPR)にもとづき、売れ残った衣類や靴などを「正当な理由なく破壊すること」を禁止する措置を採択しました。このルールは、環境負荷を減らし、資源を循環させる「循環型経済」を進めることを目的としています。
主な内容は次のとおりです。
- 売れ残り衣類や靴の理由のない破壊を禁止
- 破損や安全上の問題がある場合は例外として認める
- 企業に対し廃棄した在庫量の開示を義務付け
- 再販売 寄付 再利用などの選択肢を優先するよう促す
このルールは、大企業には2026年7月から適用され、中規模企業にも2030年以降に広がる予定です。企業は「売れなかった商品をどう扱うか」を、これまで以上に明確に説明する必要があります。
なぜ捨てる?返品と在庫コスト
EUの分析では、市場に投入された繊維製品の約4~9%が使用されないまま破壊されていると推計されています。この背景には、販売の仕組みの変化があります。
特に大きな影響を与えているのが、オンライン販売の返品制度です。
- オンライン購入の返品率は約20%
- 店舗販売の返品率より最大で約3倍高い
- 返品された商品の約22~43%が最終的に破壊されると推計
返品された商品は再販売される場合もありますが、検品や再包装のコストがかかります。再販売しても利益が出ない場合、企業は処分を選択することがあります。
さらに、売れ残り在庫の管理も重要な要素です。企業は新しい商品を継続的に販売する必要があり、古い在庫を長期間保管すると保管コストが増加します。このため、在庫を処分して新商品に切り替える判断が行われることがあります。
なぜ燃やす?ブランドと値引き
一部の高級ブランドは、売れ残り商品を焼却処分していたことが報道されています。
例えば、イギリスのブランド バーバリーは2018年までの数年間に、数千万ポンド(約60億~120億円・1ポンド200円換算)相当の在庫を焼却していたと公表しました。
この背景には、ブランド価値を維持するという戦略があります。
- 大幅値引きで販売するとブランドの価格イメージが低下する
- 安価で市場に流通すると希少性が失われる
- 非正規市場や転売による価格崩壊を防ぐ
つまり、企業にとって在庫は単なる商品ではなく、「ブランド価値を守るための資産」でもあります。このため、利益だけでなくブランド戦略の観点から処分が選ばれる場合があります。

中古が伸びる理由
一方で、すべての服が廃棄されているわけではありません。中古市場は世界的に拡大しています。
ファッション業界の分析では、2024年時点で中古ファッション市場は世界のアパレル支出の約9%を占めています。また、中古市場は新品市場より速い成長率で拡大していると報告されています。
日本でも中古アパレル市場は拡大しており、2023年には約1,150億円規模に達しました。若い世代を中心に、中古ブランド品や古着を選ぶ消費行動が広がっています。
中古市場の拡大には、次のような要因があります。
- 価格が新品より安い
- ブランド品を手頃な価格で購入できる
- 環境への配慮を意識した消費
- フリマアプリなどの普及
技術の進歩により、中古品の売買が簡単になったことも大きな要因です。
まとめ
- EUは売れ残り衣類の破壊を禁止する新ルールを導入
- 繊維製品の約4~9%が使われないまま処分されている
- オンライン販売の返品率は約20%と高い
- ブランド価値維持のため在庫廃棄が行われた例がある
- 中古市場は世界と日本で拡大している
- 在庫処理はコストとブランド戦略で決まる
服は「作られる」「売られる」「使われる」「再販売される」「処分される」という複数の段階を経ています。今回のEUのルールは、その中の「処分」という段階に新しい制約を加えるものです。
ここで考えたいのは、返品無料の仕組みは誰がコストを負担しているのかという点です。企業は返品コストを価格に反映している可能性があり、消費者の行動が価格や在庫戦略に影響を与えていると考えられます。
また、中古市場の拡大は「新品を買う」以外の選択肢を増やしています。今後、企業は再販売やリサイクルを前提としたビジネスモデルをさらに強化する可能性があります。
あなたが買った服は、どのような経路をたどって手元に届いたのでしょうか。そして、使わなくなった服は次にどこへ向かうのでしょうか。価格 ブランド 環境という視点から「服の一生」を調べると、消費と経済の関係がより深く理解できます。


