子どもは45年連続で減っている。それなのに体操教室が上場したのはなぜ?

ネイス株式会社のプレスリリース(2026年6月30日 15時30分)【ネイス株式会社】東京証券取引所グロース市場への新規上場に関するお知らせ

先月、子ども向けの体操教室を全国に展開するネイスが、東京証券取引所グロース市場に上場しました。上場から1か月がたち、会社が掲げる出店計画の中身が伝えられています。拠点数を、5年で3倍近くに増やすという内容です。
一方で、日本の子どもの数は減り続けています。総務省が2026年4月1日時点でまとめた15歳未満の人口は1,329万人。45年連続の減少です。子ども向けのビジネスは、市場が縮んでいく前提で語られることが増えました。
子どもが減っていく国で、なぜ子ども向けの教室が増えようとしているのでしょうか。教育にまつわるお金の流れを、数字から追ってみます。

Q. 子どもの数が45年連続で減っているあいだ、日本の「教育産業」全体の市場規模はどうなったでしょうか。2024年度の数字として最も近いものはどれでしょう。

A. 前の年より5%以上減った
B. 前の年からほとんど変わらず、わずかに減った
C. 前の年より増えた

→正解は「C. 前の年より増えた」です。

矢野経済研究所の調査によると、2024年度の教育産業全体の市場規模は前年度より増えています。子どもの人数が減っているのに、教育に使われるお金の総額は縮んでいません。背景には、1人あたりにかける金額の変化や、分野ごとの人気の移り変わりが関係している可能性があります。どの分野が伸びて、どの分野が縮んだのかは本文で整理します。

全体は横ばい、中身は割れている

矢野経済研究所が調べた教育産業市場(主要15分野の合計)は、2024年度が事業者売上高ベースで2兆8,555億7,000万円、前年度比0.7%増でした。2023年度は2兆8,331億7,000万円で0.7%減、2025年度は0.6%増の2兆8,720億6,000万円と予測されています。子どもが毎年減っているのに、市場全体の規模はほぼ同じ場所にとどまったままです。

ただし、内訳は割れています。2024年度にプラス成長となったのは、幼児向け英会話教材、資格・検定試験、語学スクール・教室、幼児体育指導、企業向け研修サービス、eラーニング、学習参考書・問題集の7分野。一方で学習塾・予備校市場は停滞し、通信教育市場は幼児向け・学生向け・社会人向けのいずれも縮小しました。「子ども向け=縮む」ではありません。

教育産業市場の規模の推移を示す横棒グラフ。2023年度2兆8,331億円、2024年度2兆8,555億円、2025年度予測2兆8,720億円
体操教室が上場した

ネイスは2026年6月30日、東証グロース市場に上場しました。公開価格は1,320円、取引が始まって最初についた値段は1,476円です。
その後の1か月で、株価は大きく動きました。7月2日には2,292円まで上がり、7月29日には1,126円まで下がっています。7月31日時点は1,178円で、公開価格を下回る水準です。

運営しているのは体操教室「ネイス体操教室」と、児童発達支援施設「ネイスぷらす」です。2026年4月時点で体操教室は177店舗、ネイスぷらすが11店舗。2025年8月期の売上高は28億5,500万円で前の期より23.0%増え、経常利益は3億5,900万円と3倍以上になりました。売上の9割を体操教室事業が占めています。

南友介社長は、5年以内に530拠点まで広げる方針を語っています。会社が属する幼児体育指導は、先ほどの7分野のひとつです。

なぜ、子どもが減っているのに市場は減らないのか

それは、市場の大きさが「人数」だけで決まっていないからです。市場規模は、おおまかにいえば人数 × 1人あたりに使う金額で決まります。人数が減っても、1人あたりの金額がそれ以上に増えれば、合計は減りません。

減った分野のお金が、消えてなくなるとは限りません。学習塾に使われていたお金が、別の習い事に向かうこともあります。市場全体の数字が動いていないときこそ、中でお金が移動している可能性があります。

まとめ
  • 15歳未満の人口は2026年4月1日時点で1,329万人 45年連続の減少で過去最少
  • 教育産業市場は2024年度に前年度比0.7%増の2兆8,555億7,000万円
  • 2024年度は7分野がプラス成長 学習塾・予備校は停滞 通信教育は縮小
  • 幼児体育指導はプラス成長した分野のひとつ
  • ネイスは2026年6月30日に上場し初値は1,476円 7月末は公開価格を下回る水準
考えてみよう

「少子化だから子ども向けビジネスは縮む」という説明は、とても分かりやすいものです。けれど数字を開くと、全体はほとんど動かず、中で分野ごとに明暗が分かれていました。分かりやすい説明ほど、確かめる価値があります。

通っている習い事は、数年前と比べて増えたでしょうか、減ったでしょうか。月謝は上がっていませんか。教室に通う人数と、1回あたりに払う金額。この2つを分けて見ると、街の中の変化が数字として見えてきます。

もし自分が教室を経営する立場なら、子どもが減っていく国で拠点を3倍に増やすと決めるでしょうか。何を根拠にしますか。