パソナのWellness Cloudで注目:健康経営が企業にもたらす変化とは

https://www.pasonagroup.co.jp/news/tabid312.html?itemid=5711&dispmid=821

社員が出勤していても、頭痛や睡眠不足、強いストレスなどで本来の力を出せないことがあります。こうした状態は、欠勤より見えにくい一方で、企業の仕事の進み方や人材の定着に影響しやすいとされています。

2026年3月23日、パソナはドクターズと連携し、健康診断や問診、労働時間などのデータをまとめて見られる健康経営支援プラットフォーム「Wellness Cloud」の提供を始めました。社員の健康を「福利厚生」だけでなく「経営」の問題として見る動きは、なぜ広がっているのでしょうか。

Q. 体調不良や強いストレスがある場合、作業効率はどの程度低下するケースがあるとされているでしょうか?

A. 約5%
B. 約20〜30%
C. 約50%

→正解は「B. 約20〜30%」です。

体調不良や強いストレスがあると、集中力や判断力が落ち、仕事の進み方が変わることがあります。日本生産性本部などの調査では、プレゼンティーイズムによって作業効率が大きく低下するケースが示されています。
背景には、睡眠不足やメンタル負担など日常的な状態の変化が関係していると考えられます。

見えにくい損失の正体

健康経営の話でよく出てくる言葉に「プレゼンティーイズム」があります。これは、社員が出勤していても、体調不良やメンタル不調などで仕事の力を十分に出せない状態を指します。欠勤のように数字で見えやすい損失とは違い、表面化しにくいことが特徴です。

日本生産性本部の2025年の解説では、2015年の産業医科大学の試算として、調査対象事業所でプレゼンティーイズムによる損失額が疾病休業損失の約2.8倍だったことが紹介されています。つまり、会社を休んだ場合だけでなく、出勤しているのに成果が出にくい時間も、企業にとっては大きなコストになり得るということです。

パソナの新サービスは、健康診断結果、定期問診、労働時間などを一元管理し、属性別・組織別にクロス集計できるようにしています。これにより、「どこに負担が集中しているのか」「何から対策すべきか」を、感覚ではなくデータで見やすくします。

健康管理が経営課題になる理由

パソナの発表によると、「Wellness Cloud」は1,000名以下の企業では月額16万5,000円からで、別途初期費用がかかります。決して小さい金額ではありません。それでも企業が導入を検討するのは、健康不調が生産性や離職、医療費などに広く影響するからです。

たとえば、社員の集中力が落ちれば、同じ仕事により長い時間がかかることがあります。体調不良を放置すれば、欠勤や休職につながる可能性もあります。さらに、働きづらさが続けば退職につながり、採用や育成のコストが新たに発生します。
社員の健康は個人の問題で終わらず、企業の売上や利益、組織運営にも関わってくるのです。

経済産業省が2026年3月9日に公表した「健康経営優良法人2026」では、大規模法人部門が3,765法人、中小規模法人部門が23,085法人となり、前年より増えました。制度への参加が広がっていることからも、健康を経営課題として扱う企業が増えていることが分かります。

健康はコストではなく「投資」 企業の利益につながる理由

健康経営とは、社員の健康を「お金がかかるコスト」ではなく、「将来の利益を生む投資」として考える取り組みです。
体調不良のまま働く状態(プレゼンティーイズム)が減ると、仕事のスピードや質が上がり、企業全体の生産性が改善します。その結果、売上に対してどれだけ利益を出せたかを示す指標(売上高営業利益率:ROS)も向上しやすくなります。

さらに、健康状態が改善すれば医療費の負担が抑えられます。体調を理由とした離職も減るため、新しく人を採用したり育てたりするコストも軽減されます。
海外の調査では、健康施策への投資に対して、数倍のリターンが得られるケースも報告されています。また、ESG(環境・社会・企業統治)評価の向上は、投資家からの評価にもつながり、資金調達を行う際に有利に働くことがあります。

実際に取り組みを進めている企業には、いくつかの共通点があります。経営トップが積極的に関わり、データを使って継続的に改善している点です。
たとえば、塩野義製薬では健康イベントの実施により生活習慣病のリスク指標が60%以上改善したと報告されています。また、田辺三菱製薬では卒煙支援などにより、喫煙率を22%から9.9%まで下げています。住友林業でも在宅勤務や健康診断の徹底により、働き方の改善につながっています。

企業名主な施策成果データ
塩野義製薬健康ウォーク・フレックスリスク値60%以上改善
田辺三菱製薬卒煙支援・メンタルガイド喫煙率9.9%
住友林業在宅勤務・健康診断徹底ワークライフ改善
データで対策を選ぶ時代へ

健康経営では、健康診断の受診率を上げるだけで終わりません。大事なのは、その後のデータをどう使うかです。日本生産性本部は2025年のコラムで、健康関連データを経営の意思決定に役立つ指標として扱う重要性を示しています。

実際に、塩野義製薬の統合報告書では、2023年度の国内連結ベースで健康診断受診率100%が示されています。また、田辺三菱製薬の事例では、喫煙率を22%から9.9%に下げた取り組みが紹介されています。これらの事例は、健康施策が「やっているだけ」で終わらず、数値で追われていることを示しています。

パソナは今後、医療AIプラットフォームとの連携による高度化も視野に入れています。プレスリリースによれば、ヘルスケアサービスとの連携拡大機能を4月に実装予定とされています。今後は、健康データを集める段階から、そのデータをもとに対策を選ぶ段階へと進んでいくことになりそうです。

まとめ
  • 健康不調は欠勤以外でも企業に損失を生む
  • プレゼンティーイズムは見えにくい課題
  • パソナは2026年3月23日に新サービス開始
  • 月額16万5,000円から利用できる
  • 健康データは対策の優先順位づけに役立つ
  • 健康経営を進める企業は増えている

会社の健康対策というと、健康診断や福利厚生を思い浮かべる人が多いかもしれません。ですが、この記事で見たように、健康は生産性や離職、企業の競争力ともつながっています。
学校でも、体調や睡眠、ストレスによって集中しやすさが変わることがあります。そう考えると、健康は個人の問題であると同時に、集団の成果にも関わるテーマです。

企業はこれから、社員の健康をどこまで「数字」で把握し、どこからを職場づくりの問題として改善していくべきなのでしょうか。