フジテレビ問題と株価急騰・売買急増:なにが狙い?

フジ・メディア株「異常な出来高」に潜むシナリオ 堀江氏のニッポン放送買収騒動時を連想させる | メディア業界 | 東洋経済オンライン

異常な出来高は個人が原因なのか。それとも別の「招かれざる者」が動いているのか。フジテレビジョンを傘下に持つフジ・メディア・ホールディングス(HD)の株価が1月17日以降、出来高を伴って急上昇している。1月2…

日本のテレビ業界は、視聴者のニーズが変わり、広告収入が減少しています。そのため、不動産事業や新しい収益の道を探る努力が続いています。

2025年1月に起きたフジテレビCM差替問題から、テレビ局の収益構造や株価の動きを考えてみましょう。実はメディア事業と同じか、それ以上に不動産事業の割合が多いテレビ局もあるのです。

日本の主要テレビ局の業績

2024年のデータを基に、日本の主要テレビ局の業績を比較してみましょう。

テレビ局売上高経常利益特徴
フジ・メディアHD5,664億円391億円売上高トップ、不動産事業が強み
日本テレビHD4,235億円495億円経常利益トップ、テレビ事業が強い
TBSホールディングス3,943億円277億円不動産事業の比重が高い
テレビ朝日HD3,079億円199億円テレビ放送への依存度が高い
テレビ東京HD1,486億円96億円アニメ・配信事業が好調

各局の特徴を詳しく見ると、フジ・メディアHDは売上高で他社を大きく引き離していますが、経常利益では日本テレビHDに及びません。これは、フジ・メディアHDの事業多角化戦略が売上増に貢献する一方で、利益率の面では課題があることを示唆しています。
一方、日本テレビHDは経常利益率が約11.7%と高く、テレビ放送事業の効率的な運営が功を奏していると考えられます。テレビ東京HDは規模は小さいものの、アニメ・配信事業に特化した戦略が奏功し、業界平均を上回る利益率を維持しています。

不動産事業の重要性

広告収入の減少に対応するためか、テレビ局は不動産事業に注力しています。
特にTBSとフジ・メディアHDは、不動産事業が全体利益の約50%を占めており、重要な収益源となっています。

  • TBSホールディングス:不動産事業利益71億円(全体の約47%)
  • フジ・メディアHD:都市開発・観光事業利益195億円(全体の約55%)

この傾向は、テレビ局が保有する都心の大規模不動産を活用し、安定収益を確保する戦略の表れです。例えば、TBSは赤坂サカスプロジェクト、フジテレビはお台場の複合施設運営など、放送事業とシナジーを生む不動産開発を進めています。
これらの不動産事業は広告市場の変動に左右されにくい安定した基盤を提供しますが、不動産依存による本業への投資減少という懸念も伴います。

フジテレビのCM差し替え問題

2025年1月、フジテレビは中居正広さんに関するトラブル報道により、75社以上の広告主がCMを差し止めました。この結果、350本以上のCMが影響を受け、広告収入への大きな打撃となりました。

CM撤退によるダメージ試算

フジテレビの2024年4-9月期の広告収入データを基に、年間ベースでの損失を試算すると以下のようになります:

  • タイム枠広告収入(年間):736億円
  • スポット枠広告収入(年間):686億円

仮に75社すべてが完全撤退した場合:

  • タイム枠損失:約148億円(736億円の20%)
  • スポット枠損失:約206億円(686億円の30%)
  • 合計損失額:約354億円

この損失額は、フジテレビの年間広告収入(約1,422億円)の約25%に相当し、経営に深刻な影響を与える可能性があります。さらに、視聴率低下や信頼性の毀損による長期的な影響も懸念されます。

この影響は視聴率の低下や広告主のさらなる離脱を引き起こし、長期的にはフジテレビの信頼性にも関わる可能性があります。

フジテレビの株価急騰と出来高増加

フジ・メディアHDの株価は2025年1月、出来高を伴って急上昇しました。1月22日には前日終値比8.1%高の1971.5円を記録しました。

出来高の異常な増加
※出来高とは:株式が売買された量
1月20日から22日にかけて、出来高は3679万株から4344万株に達しました。この数値は、2024年の最多出来高である464万株を大幅に超えています。
この動きの背景には、投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」の行動が一因とされています。同ファンドは中居さんのトラブルを受け、第三者委員会の設置を要求しました。

また、個人投資家や著名なアクティビスト(例: 田端信太郎氏、堀江貴文氏)がフジ・メディアHD株を購入したと公言し、これがさらなる買いを呼び込みました。

外国人株主の影響
フジ・メディアHDの外国人株主比率は32.29%で、議決権の制限を受けています。しかし、この制限がある株式が市場に出ると、国内の投資家や事業会社が新たな買い手になる可能性があります。

歴史的な出来高との比較
フジ・メディアHDの出来高が2000万株を超えたのは2005年以来のことです。この年、堀江貴文氏率いるライブドアがニッポン放送の買収を試みた際、外国人株主の議決権のない株式が大きな役割を果たしました。

仮にフジテレビ買収を考えたら…

フジテレビ買収の魅力

  • 多角的な収益構造: 不動産事業や観光事業が全体利益の55%を占め、安定した収益を確保。
  • 経営改革の可能性: 株主からの圧力により経営刷新の余地があり、さらなる価値向上が期待される。
  • 割安な株価: PBRが0.4倍と資産価値に対して割安であり、投資の好機となる。

買収のデメリット・リスク

  • CM差し替え問題の影響: 信頼性低下や広告収入減少の課題が残る。
  • 不動産事業への依存: 地域経済や市場変動のリスク。
  • 放送事業の競争激化: 動画配信サービスとの競争により、持続的成長には大きな投資が必要。

どこかがフジテレビを買収する可能性は?

  • 財務基盤の強さ: 純資産が業界トップクラスで資金繰りに余裕あり
  • 株主の賛同: 改革期待の高まりにより買収提案が支持される可能性
  • 規制の緩和: 不動産事業を活用することで放送法制約を回避できる可能性

上記の点から、問題が大きくなり、経営陣の変更を望む声も増える可能性がある今の状態で、どこかが買収を考えてもおかしくありません。そして、買収となれば、今の株価よりは高い値段で買い取る可能性もあり、それを狙ってフジテレビの株を買う人もある程度いるでしょう。

まとめ
  • フジ・メディアHDは不動産事業を活用して収益を拡大し、日本テレビHDは利益率で優位
  • 不動産事業は安定収益の柱だが、放送事業への影響にも留意が必要
  • フジ・メディアHDは投資先として注目されるが、課題も多い

フジテレビのCM差し替え問題は、広告収入だけでなく、株主改革や不動産事業の重要性も含めて考えるべき課題です。テレビ局がどのように収益を上げているのかを考え、「もし自分がテレビ局を経営していたら、不動産事業や広告収入にどれだけ依存するべきか」といった問いを家族で話し合ってみてください。

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